退職時に「同僚と連絡禁止」命令は許されるか 「SNSの関係も切れ」と会社側は言うが…

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「本件と同じケースではありませんが、会社が社員と、社員の退職時などに、競合他社への転職を禁止する旨の合意書を交わすことがあります。しかし、このような合意も、社員の職業選択の自由を制限するものとして、無条件に認められるものではありません。競業禁止の範囲が合理的な範囲を超える場合には、公序良俗に反し無効とされます」

合理的な範囲というと、どこまでを指すのでしょうか。

「競業禁止の場合でいえば、合理的な範囲は、企業の利益(企業秘密の保護など)、退職者の不利益(転職の制限など)等の視点に立って、制限の期間、場所及び職種の範囲、代償措置の有無などを検討した上で、確定されることになります」

元社員の人格的利益を制約するので無効

J子さんは、社内の人間と連絡をしないよう書面を書かされたそうです。

「本件の合意内容は、かつての同僚とコミュニケーションを取る自由といった退職者の人格的利益を、広く制約するものといえます。一方で、これにより守るべき企業側の利益は判然としません。仮に企業秘密の保護等の目的があるのであれば、その観点から合理的な範囲において規制をすればよいといえます。

したがって、本件の合意は、退職者の人格的利益を、合理的範囲を超えて制限するものといえ、公序良俗に反し無効になる可能性が高いと考えられます」

黒柳 武史(くろやなぎ・たけし)弁護士
2006年関西学院大学大学院司法研究科修了。2007年弁護士登録(大阪弁護士会)。取扱い分野は、民事・家事事件、労働事件、刑事事件など。
事務所名:中本総合法律事務所

 

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