総合職の「横並び給与」にはもはや無理がある 「大事な戦力が辞める」前に動く企業も

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しかし、その市場価値に合わせて賃上げをすればいい……となるかというと、めったにそうはならないのです。なぜなら、彼らは専門職ではなく、総合職として採用され、存在しています。総合職として、さまざまな部署でさまざまな職種に配属される可能性がある人材について、賃上げで報酬に大きな差をつけることは、社内から反対が出てくる可能性が高いのです。

取材した金融機関グループでは、新卒入社組の中に投資銀行で働く人と、プライベートバンキング(富裕層を対象にするサービス)担当の人、支店営業で勤務している行員、それらに大きな報酬の差をつけてはきませんでした。将来的に人事異動があったときに調整が困難である。また、大きく差をつけると低い報酬の職種の行員から不満が出てくる。こうしたことを勘案して賃上げをするにしても薄く広く対応をしたそうです。ただ、このこともネックとなり、専門性や希少性の高い職種の人材が他社に引き抜かれてしまう状況に陥りました。そして、ついには賃上げで差をつけざるえない状況になっていったのです。

「ハイパー専門職」を設置する会社が増加

やはり、市場価値が高く、希少性のある職種の人材の流動化を阻止するには、新卒横並びの壁を越えた対応が必要です。そこで総合職の枠とは別に、「ハイパー専門職」を設置する会社が増えてきました。

これまでも専門職という呼び名を使った役割は存在していましたが、管理職になれない人材の受け皿として活用されるパターンが大半でした。なので、横並びの域を出ない報酬体系。本当に専門性の高い人材からすれば魅力的には見えない存在であったことでしょう。

でも、今回は魅力的な報酬を得られる専門職が登場しつつあります。総合職から職種転換して、限定された分野で仕事を極めるかわりに、市場価値に見合った高い報酬を得ることができる。当然ながら総合職で得られる、多様なキャリアへのチャンスはなくなるわけですが、トレードオフであると割り切ったうえで、ハイパー専門職を選ぶ人も増えています。こうした受け皿を準備しつつ、中途採用についても果敢に行い、求人難の時代でも優秀な人材を確保ていく会社は着実に増えていくことでしょう。

高城 幸司 株式会社セレブレイン社長

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たかぎ こうじ / Kouji Takagi

1964年10月21日、東京都生まれ。1986年同志社大学文学部卒業後、リクルートに入社。6期トップセールスに輝き、社内で創業以来歴史に残る「伝説のトップセールスマン」と呼ばれる。また、当時の活躍を書いたビジネス書は10万部を超えるベストセラーとなった。1996年には日本初の独立/起業の情報誌『アントレ』を立ち上げ、事業部長、編集長を経験。その後、株式会社セレブレイン社長に就任。その他、講演活動やラジオパーソナリティとして多くのタレント・経営者との接点を広げている。著書に『トップ営業のフレームワーク 売るための行動パターンと仕組み化・習慣化』(東洋経済新報社刊)など。

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