「衰退する企業、しない企業」の決定的な違い 冨山和彦×小城武彦「衰退の法則」対談<後編>
小城:私が調べたオーナー会社、それも創業者が現役のオーナー会社は、経営者育成プログラムなどを実施して一生懸命に権限委譲をしようとしていますが、そう簡単にはできていない。形だけのボードを作っても、執行部分は誰も意見が言えず、結局はオーナーが決めてしまうことになる。そこで短期的な解決策として、自分に遠慮なく意見してくれる社外取締役を多数置き、弾力的に意思決定を変えている。それをやりながら、どのように立憲君主制にもっていくかが勝負だと思いますね。
冨山:再生機構のときのオーナー系会社について思ったのは、代々伝承するときにオーナー一族が予定調和で回ること。一族郎党が会社で役職に就いていて、構造改革をやると誰かが文句を言って、身動きが取れない。オーナー家の嫡流が跡を継ぐけれども、相互協調的な視点が大切だと、構造改革に手をつけずに、みんなで死んでいく。地方財閥に多く見られる傾向です。
小城:創業者は相互独立的自己観でも、2代目、3代目は相互協調的な人になっていくのでしょうね。
冨山:オーナー世代は暴走型で、代が下ると日本型になる。ファミリー間での相互協調で、サイレントキラーが働くのです。出すぎず、気が利くので、法事などは揉め事なくうまくやれる(笑)。ただ、うちのように再生をやる会社からみると、一族郎党サイレントキラーモデルで、傾きかけているところは数多いし、改善の余地が大きいのです。
オーナー会社のほうが再生はしやすい?
小城:社員がオーナーの言うことを聞くので、再生の観点では、オーナー会社のほうが簡単ではないでしょうか。
冨山:おっしゃるとおりで、オーナー家の数人の間でサイクルが回っているので、そこを入れ替えればいい。正社員全員でサイクルが回ると、病気が隅々まで行き渡っているので、再生するのは大変です。
小城:揺り戻しが来る理由もわかりますね。病態が心地よく、適応している。数年間だけ我慢していれば、占領軍はいなくなって元に戻る。
冨山:そういう意味では、揺り戻しが起きない仕組みをビルトインしないといけません。ただ、社外取締役として、そこまで能力のある人はなかなかいないのです。特に、非論理的なKYは面倒くさい。
小城:よくわかります(笑)。そこは大事ですね。