かつて、長野五輪決定の決定打になったのは、五輪開催収益で冬季スポーツ強化基金をつくり、この基金によって、冬季スポーツ発展途上のアジア各国を支援するという提案であった。これによって、自国への顔が立つアジア委員の票を取り込んだわけだ。
実際には、ほかの投票とのバーターも多いとされる。次回以降の開催地選定や会長選などの他の投票と絡めて「次回投票ではあなたの推す『●●』に投票するので、今回は『△△』に投票して」ということもあると言うが、こうした配慮も必要だ。
実は、ビジネスでも、担当者の負荷を減らすことが決め手になったり、あるいは権威のある人の裏付けや社内で顔が立つなど、本人が明確に語らない潜在ニーズまでも押さえたことが最終決断につながるということも少なくない。
それでも最後は、「熱意と謙虚さ」
そして、相手に決断をさせるために最後に重要になるものは、古今東西変わらない、「熱意と謙虚さ」である。
パリがロンドンに出し抜かれた2012年五輪招致もそうだった。人間は、優位に立つとオゴリが出る。断トツで本命視されていたパリは、投票前日に前祝いパーティをしてIOC委員のヒンシュクを買い、まさかの逆転を許した。読者も、公私ともに、熱意と謙虚さがある相手にお願いされた時、「そこまで言うなら」と、動いたご経験があるのではないか。最終的には、人は打算だけでは動かない生き物である。
以上、決断させるためのオモテとウラについて見てきたが、結局のところ、2020年夏の五輪開催都市はどこになるのだろう?筆者の独断予測では、最初は3都市のうち、まずイスタンブールが政情面での不安感を払拭できずに脱落。決選投票はマドリードと東京での一騎打ちになるのではとみる。最終的には、神風が吹き始めた機運をとらえた、東京のウラとオモテの努力が実り、最後は、56年ぶりのオリンピック開催を勝ち取ると信じたい。日本人としての熱意と謙虚さ、そして「IOC委員に決断させる力」を信じて締めくくりとしよう。
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