イスタンブールでは政治デモが本格化、マドリードはユーロ危機による財政不安と、列車事故の影響などでともに運営不安の声が高まり、結果として東京の「安全・安心・確実」の運営力が環境変化によって差別化ポイントになった。
棚ボタともいえるが、ある意味で敵失を逃さず、優位性を打ち出したともいえる。ビジネスシーンでも、決断させるための環境は日々変わっていく。その流れを逃さないことだ。
「決断させる」とは、文字どおり、自分の提示する選択肢に決め、ほかの選択肢を断ってもらうことだ。そのためには、決断させたい相手の特徴とニーズをとらえて(市場)、自分の強みを生かして(自分)、ニーズに沿った差別化ポイントを訴える(競争)ことが、前提になる。
決断をさせるためのウラ技とは?
しかし、実態はそれほどキレイゴトだけで投票先の決断が行われるわけではない。「勝敗を分けるのは、水面下のロビー活動」とも言われる招致活動。通常のビジネスシーンでも使えるウラテクニックを、今回は2つほど見ていこう。
1.タバコでも、トイレでも、とにかく接触の頻度を増やせ
ひとつ目は、当然だが、キーマンへの接触の頻度だ。
心理学で言う「単純接触原理」は、頻繁に会う人ほどその人への好意は増すというものだが、人間には無意識的に頻繁に会う人を支持する決断をする傾向がある。政治家が選挙前になると、直接有権者回りをするのはこのためだ。
オリンピックの招致委員も、直接的ロビー活動を禁じる規約に抵触しない範囲で接触を図る。たとえば、IOCメンバーが出没しやすい場所を頻繁に訪れ、旅先で“偶然”出会ったように装う。王室パーティや、首脳の海外遊説が増えるのもこのためだ。ビジネスシーンで言えば、社内の根回しはもちろん、会いにくい場合は、“偶然”同じタイミングでのトイレを狙ったり、喫煙のタイミングを狙ったりする人もいるほどだ。
2.「プレゼン」よりも、「プレゼント」?相手の潜在ニーズを探れ
2つ目は、「本音」と「建て前」を見極め、表には出ない潜在ニーズに応えることだ。
招致に当たってのプレゼンテーションの大切さはしばしば語られるところだが、それ以上に重要なのは、「プレゼン」よりも、「プレゼント」だと言えるかもしれない。内心では決断に当たって具体的なメリットを求めている相手には、ルール内でそれを提供しないと決断には至らない。
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