グローバルでは、言い訳するのが当たり前
中国人もアメリカ人もインド人もよく言い訳をします。日本人からすると「言い訳ばかりしやがって」ということになるのですが、ここで冷静になって彼らの思考パターンを分析する必要があります。彼らにとって「言い訳」とは、相手からの非難に対する反論であって、言い訳しないのは議論する「能力」が欠如していることを意味します。ですから、言い訳しないほうがヘンなのです。
一方、日本人は「言い訳」は自己弁護であり、卑怯なふるまいを意味します。言い訳しないのは、能力がないからできないのではなくて、言い訳する「態度」が好ましくないと思っているのです。言い訳という行為を、片や「能力」の問題ととらえ、こちらは「態度」の問題と考えるのですから、すれ違いが起こって当然です。「言い訳上手」と「言い訳嫌い」は、一体どうすれば共存できるのでしょうか?
中国ではビジネスもグローバル式
人々の態度や行動だけでなく、ビジネスのやり方にも「常識」の違いは存在します。日本企業にとって中国市場はやっかいで高リスクの市場であることは周知のとおりです。しかし大きく見ればそこはグローバル市場のひとつであって、競争ルールや競合相手、顧客の価値観や購買行動もグローバルビジネスの常識で理解すべき市場です。逆に言うと、日本の常識やビジネスモデルに縛られていてはうまくいきません。
広告業界を例にとると、中国では1990年代から「4Aエージェンシー」と呼ばれる欧米系の有力広告会社が進出しており、欧米式の「フィービジネス」が中国ローカル広告会社にも広く普及しています。このビジネスモデルは、クライアントに提供する広告戦略やクリエーティブ表現制作の対価を月極めの「フィー」で請求するもので、テレビやインターネットなどの広告メディアの代理販売ビジネスとは切り離して行われています。
一方、日本国内では現在でも広告メディアの購買代行に伴う「コミッション」型の取引が主流です。多くの場合、メディアの扱いとクリエーティブの扱いはセットになっており、キャンペーン戦略立案やクリエーティブ作業の費用はメディア・コミッションに含めて一括して請求する方法が採られています。
こういったやり方に慣れていると、中国で現地クライアントの仕事を受注する際に戸惑ってしまうわけです。こちらはグローバル方式ですから、メディアの仕事はメディア・エージェンシーが受注します。広告会社は「ブランド・エージェンシー」と呼ばれ、主としてコミュニケーション戦略の立案や広告表現の制作を担当して、対価を月額フィーで請求するのがグローバルの常識です。
ビジネス・ルールでも人々の行動でも、グローバルと日本の差を埋めるには、まずは相手側の論拠や心理を解読することが必要でしょう。そのうえで、異なる特質をお互いが上手に利用し合って、両者が共有できる新たな「常識」を創るしか、共存の道はなさそうです。
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