築地市場再開発は「時間切れ」になりかねない

このままでは「都の守旧派役人」の思うつぼ

山口:相当複雑な状況になっていますね。PTとは違う考え方をしている、都庁の役人たちは何をしているんですか。

「壊して終わり」は都庁の一部の役人の「思うつぼ」

竹内:誤解を恐れずに言えば、「事態が膠着すること」は、豊洲移転を正しいと考える新市場整備部など、一部の役人にとっては好都合なんです。彼らは小池知事に対しては「反対派がいてまとまらないので、市場問題の検討は後回しにして、とりあえず2020年の東京オリンピック・パラリンピックに集中しましょう」と言って、築地に関しては、築地市場を壊すことだけやろうとしているとしか私には思えません。

周知のように、オリンピック・パラリンピックでは、築地市場は駐車場として使用されることになっているのですが、われわれは、既存の駐車場と一部建物の取り壊しで十分対応できると踏んでいます。再開発時に既存の一部の建物を残す手法は、歴史的にも重要なだけでなく、再開発のときには目玉の一つとなるなど、私は建築家としてもとても重要な考え方だと思っています。しかし、都の役人たちは、「全部壊して駐車場にしてしまえばいい」と考えています。

いずれにしても、すべての作業がずるずると先延ばしになると、そのうちに小池都知事の任期(2020年7月30日)が切れてしまい、築地に戻るというプランが白紙になる可能性があります。

山口:なるほど。都庁の守旧派の役人は時間切れを狙っているわけですか。

竹内:そうなんです。相当巧みな戦略です。彼らは東京の食文化がどうなるとかにはまったく興味がない、といっても過言ではない。とにかく、自分たちが当初描いたプランどおりに事を進めることが、いちばん大切なことだと考えているのです。

それからもう一つ、一刻も早く築地の再開発をやり遂げなければならない理由があるんです。前回、ぐっちーさんと対談させていただいたときにも触れましたが(ぐっちーさん「豊洲移転など、ありえない!」)、東京の11の中央卸売市場での取引は数量ベースでも金額ベースでもピーク時と比べて半減しています。

山口:ええ、そうでしたね。理由は大規模スーパーが産地直送に乗り出したり、ネット取引で生産者と消費者がダイレクトに取引したりする割合が増えてきているからですよね。

竹内:そうです。世界最大のネット通販であるアマゾンが今年から日本でも東京などの地域限定で生鮮食品を扱う「アマゾン・フレッシュ」のサービスを開始しましたが、今後サービスの範囲を広げていくのは明白です。セブン&アイホールディングス傘下のイトーヨーカ堂なども、従来のネットスーパーよりも利便性を高めた宅配サービスに注力していこうとしていますし、統合が決まっている大地を守る会とオイシックスもネットを通じた直接販売にさらに力を入れていこうとしています。

こうした流れもあって、今年6月に閣議決定された「規制改革実施計画」の中では、卸売市場も俎上に載せられました。「卸売市場については、経済社会情勢の変化を踏まえて、卸売市場法を抜本的に見直し、合理的理由のなくなっている規制は廃止すべく、平成29年末までに具体的結論を得て、所要の法令、運用等を改める」というのです。平たく言えば、国は中間流通、つまり卸売市場をなくす方向に舵を切っているんです。

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