起業して躓いた躁うつ病37歳男性が語る悔恨 「絶好調な自分」は病気のせいだった

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離婚を望まないヨシマサさんに対し、妻の意思は固かった。養育費などの代わりに、彼の両親の援助で買ったマンションを渡すことで合意。子どものそばにいるために、しばらくは近くにアパートを借りて暮らしたが、体調は戻らず、アルバイトをしたり、しなかったりの収入で、すぐに蓄えは底をついた。やむなく千葉の実家へ戻ることを決めたという。

その後の半年間はほぼ寝たきり状態。映画1本でさえ最後まで見る気力が湧かず、本を開いても1ページも読むとどっと疲れた。この間、過食により体重は20キログラム近く増えた。

この頃、医療機関で精密検査を受けた。すると、自身の障害は、頭部外傷や脳出血など脳への損傷によって引き起こされる器質性精神障害によるものだと判明。ヨシマサさんは「ずっと、周囲とうまくいかない自分も悪いと思ってきましたが、今は自分の脳にはもともと問題があったんだとわかり、少し気が楽になりました」と言う。

今はこれでいい

障害の原因を正しく理解できたからか、体調は少しずつ回復。自分に合った当事者会も見つけ、高校時代に打ち込んだ卓球を再開した。仕事はパソコン入力などを中心に数カ月ごとに転職を繰り返しているが、ヨシマサさんに言わせると、今はこれでいいのだという。「採用面接で病気のことは正直に話します。そしてストレスを感じたら早めにギブアップ。そうすると、うつが軽いうえに、短くて済むんです。今の職場で、初めてストレスの原因を上司に打ち明けたところ、理解をしてもらえ、働き続けることができています。間もなく半年。記録更新中です」。ゆっくりだが、着実に前に進んでいる実感がある。

一方、当事者になってみて、双極性障害は知的・身体障害や自閉症、発達障害などに比べて「置き去りにされている」と感じることがあるという。

「当事者会でも、日本のテレビのチャリティ番組で双極性障害が取り上げられたことって、見たことないねと、よく話題になります。ドラマの主人公になることもほとんどない。この障害を美しく描くのは難しいですから」

双極性障害の躁状態は、人によっては浪費や、不特定多数と性交渉を持つなどの「性的逸脱」といった形で現れる。ヨシマサさんが起業に走って家族を失ったように、それらは、時に身近な人間との絆を修復不可能なまでに破壊するのだ。

障害年金の申請も、躁状態で年金事務所を訪れようものなら、「元気ですね」など言われて門前払いされることも少なくない。状態が比較的固定しているとされる知的・身体障害に比べ、その後に壮絶なうつ状態に転じる双極性障害の実態はなかなか理解してもらえないという。

障害年金をめぐっては、ヨシマサさんは現在、障害基礎年金の申請中だ。しかし、手続きを進める中で、障害厚生年金は3級から受給できるのに対し、障害基礎年金はそれよりも状態が重い2級か1級でなければ受給できないことを知った。万が一、3級と判定されれば、年金を受け取ることはできない。

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