日経平均は米市場上昇でも反落 来週は「デッドクロス」到来か?

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8月最後の取引となった30日の東京株式市場は反落。日経平均株価は前日終値比70円85銭安の1万3388円86銭、TOPIXも同10.46ポイント安の1106.05とそろって下げた。東証1部の出来高は概算で22億2070万株と低調で、売買代金は1兆9703億円と15日連続の2兆円割れとなった。

前日の米国株式市場は4~6月の実質GDP(国内総生産)成長率が上方修正されたことが好感され、2日続伸。為替も朝方まで1ドル98円台の円安傾向が続いていた。そのため、午前の東京市場は上昇で始まった。9時08分には前日終値比156円高の高値を記録。ただこの勢いは続かず、その後は為替ややや円高に傾いたこともあり、先物の売りが主導する形で一本調子の下げ相場に転じた。

昼のバスケット取引は128億円が成立し、「売り買い均衡」(大手証券)と伝えられた。アジアの株式市場も総じて堅調。だが後場の東京市場は引き続き、上値が重い展開で、市場の買いエネルギーが弱い中で利益確定売りが優勢となった。

本日の下げについて市場ではさまざまな観測が上がっている。「陽線確率が一番低い9月を控えた週末ということで不透明要因が多い。9月2日はレイバーデーで米国市場は休場であるうえ、シリア情勢は軍事介入の懸念がいったん後退したものの、まだ続いている。投資家はポジションを傾けづらい状況だ」(大手証券)。米国の景気回復が鮮明になっているが、QE3(量的緩和第3弾)縮小への警戒を指摘する声もある。

チャート的に見ても、転換点が近づいているようだ。昨年11月に野田佳彦前首相が解散示唆発言を行って以降、日経平均株価は26週移動平均線をずっと上回ってきたが、今週はついに下回った。このまま行くと、来週には13週移動平均線が26週線を上から下へ突き抜ける「デッドクロス」となる可能性が高い。

東証33業種のうち、本日上昇したのはわずか3業種。海運、ガス、その他金融だった。下落率のワーストはパルプの2.62%で、以下、その他製品、非鉄金属、鉱業、石油・石炭製品が続いた。個別銘柄では、道路除染システムの開発を発表したJBRや、放射性セシウム除去技術の開発を発表したアタカ大機がストップ高に。下落率では、このところ連騰し過熱感が充満していた日本トリムがワースト。「Wii U」の値下げを発表した任天堂は売れ行きの悪さが嫌気され、下落率10位に顔を出した。

不透明感の増す東京株式市場だが、来週はイベントも目白押し。3日(火)に法人企業統計が発表されるほか、4日(水)に米国のベージュブック、貿易統計の発表、日銀の金融政策決定会合(4~5日)があり、5日(木)には米国のISM非製造業景況指数や雇用報告が発表される。さらに5~6日にはG20首脳会議、ECB定例理事会が行われる予定だ。シリア情勢次第では、金融マーケットの流れは一変する可能性もあり、情勢は予断を許さない。

野村 明弘 東洋経済 解説部コラムニスト

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のむら あきひろ / Akihiro Nomura

編集局解説部長。日本経済や財政・年金・社会保障、金融政策を中心に担当。業界担当記者としては、通信・ITや自動車、金融などの担当を歴任。経済学や道徳哲学の勉強が好きで、イギリスのケンブリッジ経済学派を中心に古典を読みあさってきた。『週刊東洋経済』編集部時代には「行動経済学」「不確実性の経済学」「ピケティ完全理解」などの特集を執筆した。

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