トラック大事故を防ぐ「後付けカメラ」の実力 米インテルが買収したイスラエル企業が開発

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モービルアイ・イスラエル本社で製品部門本部長を務めるデービッド・オバーマン氏は「すでに走っている車両に向けた後付けの安全装置は、今後新興国を中心に需要が伸びると見ている」と、世界のアフターマーケット市場における需要の伸びへの期待も示した。

警報装置の次は、「後付け自動ブレーキ」にも期待がかかる。しかし、単なる警報だけでなく、自動ブレーキの場合は車の制御系統まで替えなければならない。技術的なハードルは高いといえる。実際自動ブレーキの後付けについては、一部メーカーが開発の是非自体を検討している段階だ。

大型トラックでは自動ブレーキ搭載が義務化

一方、自動ブレーキなど、後付けでない新車向け安全装備では各メーカーがしのぎを削っている。2014年11月には、それ以降に発売される新型車を対象に、総重量が12トン超の大型トラックと大型バスへの衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)の搭載が義務化された。今年の9月からは、継続して生産される旧モデルの大型トラック・バスの新車に対しても搭載が義務化される。

2017年春は、日野自動車が大型の「プロフィア」、中型の「レンジャー」、三菱ふそうが大型の「スーパーグレート」、UDトラックスが大型の「クオン」をそれぞれ発表し、国内メーカーによる新型トラックの発売ラッシュとなった。いすゞ自動車は2年前の2015年、他社に先駆けて大型「ギガ」を刷新済みだった。

いずれも今年9月の排ガス規制に対応したモデルチェンジで、それぞれ燃費や積載量の向上、新型エンジンの搭載などアップグレードが見られたが、今回各社が特に注力したのが「安全性」や「快適性」の部分だった。

追突を防止するための自動ブレーキや車線逸脱警報、車間距離を保ちながら前方車に追従する機能は、各社が一様に搭載した。ほかにも、ドライバーの挙動から眠気や疲れを検知すると、休憩を促すモニタリング機能、疲労を軽減する特別な運転シート、運転しやすいオートマチック車、乗り降りしやすい2段ステップドアなど、経験の少ない新人や女性・高齢者ドライバーを考慮し、乗りやすさを重視した改良が目立った。

トラックやバスは、2~10トンを超える「鉄の塊」だ。乗用車に比べ、事故を起こした際の影響は大きい。とはいえ、すべての事業者が数千万円をかけて、自動ブレーキなどの安全装備が充実した新車に買い替えるのは難しい。後付け安全装置はそんな中での現実解といえるだろう。取り付けの体制整備が急がれる。

森川 郁子 東洋経済 記者

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もりかわ いくこ / Ikuko Morikawa

自動車・部品メーカー担当。慶応義塾大学法学部在学中、メキシコ国立自治大学に留学。2017年、東洋経済新報社入社。趣味はドライブと都内の芝生探し、休日は鈍行列車の旅に出ている。

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