では、知られていない事実とはいったい何か。それは、勉強しなさいと言わなくても勉強する子は、少なくとも2つの前提条件が満たされているということなのです。
前提条件その1:「小さい頃から勉強に対して強いネガティブな印象を持たせていない」
人はいつから、勉強に対してネガティブな感情を持つようになるのでしょうか。多くの日本人に「勉強が好きか嫌いか」と問えば、「嫌い」と即答する人が数限りなくいます。事実、私は講演会に参加されている保護者の方によく尋ねますが、「嫌い」のほうに手を挙げる方が圧倒的です。「嫌い」であっても勉強ができるという人もいます。しかし、その嫌いな程度がひどく、親が勉強に対して強いネガティブな感情を持つと、概して子どもはポジティブな感情を持つようにはなりません。
小学生になると学校でテストがあり、点数がつきます。そして成績表なるものが登場し、人によっては中学受験をする場合、偏差値が登場し、序列化が行われます。中学受験しなくても、公立中学に進学すると、学校で成績表が5段階評価として登場し、高校受験のためにやはり序列化が始まります。高校ではさらにそれが加速します。勉強の世界では、偏差値という価値基準で選別されます。すると子どもの中には、その偏差値の尺度が、自分の存在価値とイコールであると錯覚を起こすケースが出てくるのです。これが子どもの自信喪失の原因の一つとなっていることは言うまでもないことでしょう。
このような序列化がついてまわる勉強を、積極的にとらえられるはずがありませんね。さらに追い打ちをかけるように、勉強自体を面白く思えません(本当はそうとは限らず、内容や学び方次第で面白く、興味関心が出るものであるのですが)。ですから「勉強したい」などとは夢にも思わず、「勉強はしなければならないこと」となっていきます。すると、自分に“正直な”子は、やりたくない勉強に心が向かいません。さらに親が「勉強は面白くないもの」「勉強はしなければならないもの」と考えていると、普段の何げない言動にそれが表れてしまいます。
勉強するような環境が家庭内にあるか?
しかし、勉強をネガティブなものとしてとらえていない人もいるのです。勉強ができるからポジティブな人もいるでしょうが、それとは関係なく、そもそも勉強に対してネガティブ感情が出ない、出ないようにしている人がいるのです。
前提条件その2:「子どもが勉強する際に、家庭内にそれを阻害する要因がない」
つまり、勉強するような環境が家庭内にあるのかどうかということです。たとえば、子どもが勉強する場面で、テレビがついていたり、周りに遊び道具がたくさんあったり、家庭内がうるさい状況の中では、到底、勉強モードに入ることなどできません。どのような環境にあるのかは、重要な背景なのです。
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