安倍首相、改憲に必要な「解散・3選」は至難に 「双六」で道筋をたどってみると…

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となれば、「3選と解散を両立できるのは総裁選後だけ」(細田派幹部)ということになる。かねてから首相自身も総裁3選直後の解散を「本命」と考えていたフシがある。自民党総裁選は投票日が9月中旬に設定されるのが通例だ。となれば、総裁選を勝ち抜いて内閣改造・党役員人事を断行したうえで9月末に臨時国会を召集して冒頭解散というシナリオが浮上する。

その場合の投票日は10月21日になるとみられる。年末の天皇退位が現実となれば、政府がきちんと対応するためには少なくとも11月中旬までに新内閣を始動させる必要があるからだ。選挙後の首相指名のための特別国会召集には半月程度の準備期間が必要とされるため、「選挙日程はピンポイントにならざるをえない」(総務省)のが実態だ。

この総裁3選後解散には2019年10月からの消費税の10%引き上げの可否も絡む。予算編成上、政府による引き上げの最終決定は1年前の来年10月とされる。このため、首相は選挙戦を有利に進めるため「再々先送り」を決断する可能性も指摘されている。しかし、そうした首相の方針転換は、自民党だけでなく財界や霞が関からも強い反発が出ることは確実だ。そうなれば選挙に圧勝しないかぎり、選挙後に退陣問題が浮上することは避けられない。

選択間違えれば「一丁上がり」にも

こうしてみると、首相にとっての「3選・解散双六」は関門だらけだ。ベストの"上がり"は選挙に勝って総裁3選も実現して安倍1強が続くことだが、現状では「その可能性は極めて低い」(自民長老)のは間違いない。となれば次善の"上がり"は「選挙の負けを最小限に留めての3選」ということになる。ただ、首相が総裁選前後の解散で自民党の議席を減らしてリーダーとしての求心力を失えば、改憲という悲願も実現困難となり、「首相自身の政権維持のモチベーションがなくなる」(側近)ことで退陣表明につながる事態も想定される。

こうしたシミュレーションは今秋以降の首相の政局運営の巧拙によっても展開が変わる。来年の総裁選で首相が3選を狙っても、対抗馬として石破氏や岸田氏が出馬すればその時点での政局状況によっては「大混戦」になり、首相が敗北する可能性も否定できない。客観的に見れば、政局秋の陣以降の首相は「強引に双六の"上がり"を求めると、その時点で『一丁上がり』になりかねない」(首相経験者)という厳しい状況での政権運営を強いられることは間違いなさそうだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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