安倍首相、改憲に必要な「解散・3選」は至難に 「双六」で道筋をたどってみると…

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一方、野党陣営の中核の民進党の対応は9月1日投開票の同党代表選の結果待ちだ。代表選2候補のうち前原誠司元外相が「共闘見直し」を主張する一方、昨年参院選を党幹事長として指揮した枝野幸男元官房長官は「共闘推進」論者だからだ。今のところ前原氏が優勢とされるため、代表選後に本格化する共産党も含めた4野党共闘の協議は難航必至。ただ、政局的に見てトリプル補選に安倍政権の命運が懸かる状況となれば、「慎重論の前原氏が全面共闘による野党統一候補擁立に踏み込む可能性は少なくない」(民進党幹部)だけに、自民党幹部も戦々恐々だ。

同党内には「2勝1敗なら打撃は少ないが、1勝2敗や全敗なら安倍批判に火が点きかねない」(若手)との声も広がる。27日投開票の茨城県知事選で自民、公明推薦の新人が7選を目指した現職を接戦の末破ったことで、与党幹部は「結束して選挙に取り組めば簡単には負けない」(公明)と胸を張るが、首相サイドはトリプル補選について「全勝なら政権は安定軌道に戻るので、年内解散もありうるが、負け越せば解散どころではなくなる」(側近)と肩をすくめる。

獣医学部で設置審の判断保留は「政治的判断」?

選挙戦では「森友・加計疑惑」への対応が争点となるのが確実で、特に愛媛3区は隣接する今治市での加計学園獣医学部新設問題を抱えるため、自民候補のマイナス要因となることは避けられない。

同獣医学部の設置認可については8月25日の文部科学省大学設置・学校法人審議会(設置審)で判断保留となった。「騒ぎの中では保留もやむをえない」(文科省OB)との見方が多いが、最終決定が10月末とされることから、「トリプル補選への影響回避のための政治的判断では」(民進党幹部)との疑念も拭えない。

首相が「年内解散」を見送れば、あとは自民党総裁選の「前」か「後」かの選択となる。「前」とすれば2018年の6月中旬が想定される通常国会会期末の解散、7月選挙の可能性が大きい。通常国会で憲法改正に向けた与野党の改憲条項絞り込み作業に進展があれば、首相が改憲実現を掲げて国民の信を問うことも想定される。しかし、選挙の結果、自民党が大幅に議席を減らし、衆院の改憲勢力3分の2を失うことになれば、首相の自民党総裁3選にも赤信号が灯る。敗北の責任論と改憲という「レガシー(政権の遺産)」をなくした首相が退陣表明に追い込まれる事態もありうるからだ。

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