ミサイル発射の北朝鮮に圧力だけではダメだ 時間をかけて交渉、環境づくりに努めるべき
現在では北朝鮮の貿易額全体の約9割が中国に依存している。北朝鮮は復旧した鉱山で生産された石炭と鉄鉱石を中国に輸出し、その代価として北朝鮮の中小型工場などを正常化させる作業を進めてきた。経済建設と核武力建設の並進路線は、これまでの重化学工業を優先する政策を後回しにし、軽工業と農業を優先させる政策の土台となったのだ。これによって北朝鮮は1970年代の水準に経済を回復させようとしていた。従来の北朝鮮経済の対外依存度は5%前後だった。その後、経済難が続いたために依存度は1割を上回り、経済復旧の過程で2割を超えた(2016年に韓国銀行が作成した統計によれば21%)。
2割の対外依存度のうち、その90%は中国に依存している。単純計算すれば北朝鮮経済は、中国経済に18%程度依存していることになる。そのため国際社会は、中国が決心すれば、北朝鮮経済は持ちこたえられないと計算する。ただ実際には、北朝鮮は対外依存度を下げるために内部の経済システムを地域分権型の市場中心的な運営に転換し、再び5%水準へ依存度を下げられるという自信を見せている。
核の拡散という”誘惑”に陥る?
実際に食糧を自主的に解決でき、生活必需品を供給できる程度の軽工業の工場稼働も可能になった。電力でも中央が供給するシステムから地方分権式に変わっている。家庭には太陽光発電や小型発電機などを利用し、最小限の電力供給ができるようになった。さらには、石炭など鉱山の運営が正常化し火力発電所の稼働率が高まっただけでなく、水力を利用した中小型発電所も地域単位で稼働している。総合してみると、最低水準から、自主生存が可能になったということだ。
もっとも、自主的に解決できない問題はある。石油の供給だ。現在は原油の輸入減少に備えて、石油類の使用を抑制しながら、最大限の備蓄を行っている。中国やロシアから供給が中断される場合、北朝鮮はまた別の方法を模索するだろう。すでに北朝鮮は非公式(ヤミ)市場で石油を調達する方法に慣れている。それであれば、全面封鎖になっても、一定程度の石油は確保できるだろう。
このように、北朝鮮経済は依然として厳しいものの、相当期間は完全封鎖に持ちこたえられるものと判断できる。金正恩はすでに「第2の苦難の行軍」に徹底して備えよとの指示を出している。市場システムによって、地域別に生き残りができる北朝鮮住民は最低水準を維持し、自国の指導者に向けて抗議するより、さらなる忠誠心を見せるだろう。
今まで北朝鮮は核保有国としての義務を果たす明らかにしている。拡散をしないということだ。しかし、時間が経てば経つほど、核の拡散という”誘惑”に陥るだろう。経済的に持ちこたえることはできるが、核拡散を通じた非公式市場からの取引は、増加するほかない。これはテロ集団への流入可能性を高めることになる。制裁と圧力一辺倒の対応は、かえって北朝鮮の核の脅威を高める結果を招く、という結論が導き出される。
金正恩委員長は核兵器開発を放棄する意志はなく、かえって核保有国の地位を享受するためには、一定期間の「苦難の行軍」も辞さないという立場だ。米国との平和協定が締結されても、北朝鮮は核を放棄しないことがわかる。結果的に、北朝鮮が核兵器開発を完了させるときまで、このような状況は続くほかない。これが核問題に対する北朝鮮の考えなのだ。
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