「原油価格はもう一度下落する」は本当なのか 「1バレル=40ドル台後半」は、いつまで続く?
さらに、米国では石油精製会社の利ざやの縮小が続く可能性が指摘されている。ベネズエラなどからの重質原油の供給減少から、複数の石油精製会社はコスト高ではあるが精製が容易な軽質スイート原油にシフトしているという。
石油精製会社がコスト増の部分を製品に転嫁すれば、当然のことながら、
ガソリン価格は上昇することになる。主要石油精製会社は第2四半期の決算発表時に、軽質原油の精製を増やしていると公表している。エクソンモービルも湾岸プラントで軽質原油の精製を増やしているという。
このような状況の中、米国のドナルド・トランプ政権はベネズエラへの圧力を強めている。もし、同国からの輸入が制限されるような事態になれば、さらにマージンは圧迫されることになる。そうなれば、石油製品価格の上昇がより顕著になり、これを受けて原油相場にも上昇圧力が掛かることも十分に想定される。その意味でも、今後のガソリン相場の動向にも注目しておきたい。
50ドルを完全に上抜ければ、本格的な上昇へ
原油価格が下がりにくくなってきたことを察知してか、投機筋はようやく売りを止めて、買いに転じ始めたようである。これまで下値を売ってきた投機筋が、これまでのスタンスを変え始めているとすれば、原油相場の下値はそれだけで支えられることになろう。WTI原油は節目の50ドルを前にほぼ膠着状態が続く。
しかし、いったんは壁にはね返されたが、50ドルを上抜けると雲が晴れ、いよいよ本格的な上昇に向かうだろう。価格の回復には想定以上に時間が掛かっているが、需給面を自然体で分析すれば、現在の価格水準があまりに安すぎることを、市場もいずれ気づくはずだ。
最近は英国やフランスなどが、相次いで「電気自動車の強化、脱ディーゼル・ガソリン宣言」を打ち出している。確かに、将来的には電気自動車の普及でガソリン・ディーゼル車の販売台数が落ち込む可能性が高い。欧米ではこれらの車の販売を将来的に停止する方針が示され始めている。
とはいえ、それにはまだ20年以上もある。現時点で、原油の余剰が拡大し、需給が緩むことで「原油価格は30ドルを割り込む」などとする見通しも聞かれる。しかし、そのような安値では、原油そのものの継続的な生産ができなくなる。このような安値見通しは、あまりに短絡的であることを認識しておくべきだ。
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