切り札はiPS細胞 ニコンが医療に本腰 デジカメ不振のニコン。出遅れ医療で巻き返す

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虎の子のカメラは市場急変

そもそも医療分野だけでなく、収益の多角化でニコンは完全に出遅れている。ニコンのカメラ事業依存度は売り上げで74%、営業利益は119%に達する(2012年度)。半導体露光装置や液晶露光装置でも一定の収益を稼ぐが、世界トップの蘭ASML社との差が大きいうえに、業績変動が激しく安定収益源にはなっていない。ライバル、キヤノンが複合機やプリンタなど事務機器というカメラ事業に並ぶ収益柱を持つのとは対照的だ。

虎の子のカメラ事業は、スマートフォンの普及や中国経済の成長鈍化で市場が急変している。コンパクトデジカメの全世界出荷台数は12年に前年比21.9%のマイナスとなった。13年は6月までの累計で前年同期比48%減と落ち込み幅が拡大している。これまで堅調だった一眼レフデジカメも13年1~6月は18.2%減と縮小に転じた(いずれも日本カメラ映像機器工業会)。

8月8日、ニコンは13年度の営業利益見通しを650億円(前年比140億円増)へと従来予想から200億円下方修正した。販売見通しをコンデジで前年比33%減の1150万台、収益柱である一眼レフを含むレンズ交換式も同6%減の655万台とそれぞれ従来計画から250万台、55万台引き下げたからだ。

このようなデジカメ市場の落ち込みを考えると、新たな収益柱の育成は急務となっている。難病治療の切り札として期待が集まるiPS細胞は、本業の衰退に悩む企業にとっても福音となるのか。

(撮影:尾形 文繁)

週刊東洋経済2013年8月31日号

島 大輔 『会社四季報プロ500』編集長

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しま だいすけ / Daisuke Shima

慶応義塾大学大学院政策メディア研究科修士課程修了。総合電機メーカー、生活実用系出版社に勤務後、2006年に東洋経済新報社に入社。書籍編集部、『週刊東洋経済』編集部、会社四季報オンライン編集部を経て2017年10月から『会社四季報』編集部に所属。2021年4月より『会社四季報プロ500』編集長。

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