英国政府の具体的な方針が示されるにつれて、改めて、英国とEUの思惑の違いが浮き彫りになってきた。
英国政府としては、在英企業の不安を和らげ、経済への悪影響を抑えるために、出来るだけ早く「暫定協定」に目途をつけたい。関税同盟からの離脱でEUが締結したFTAからも離脱することになるため、「暫定協定」期間中にEU域外との貿易交渉も認められなければ、離脱の悪影響は増幅されてしまう。他方、清算金については、国民投票前の離脱派のキャンペーンで、もっぱらEU予算への拠出の停止による負担軽減という面のみが強調されただけに、英国内での反発が予想される。
とりわけ今はメイ政権の基盤が弱体化し、再選挙に踏み切れば、政権交代が予想される状況だ。あくまでも「暫定協定」の見返りという限定的な支出にとどめるとともに、離脱によって、将来にわたる負担が軽減される効果を強調して、国民の理解を得たい思惑があると推測される。
強気のEU、英国の「いいとこどり」を警戒
しかし、EUが、英国の国情を慮って、協議の順序を入れ替えたり、単一市場や関税同盟への特権的アクセスを認める、あるいは清算金の負担を軽減する、などは考えにくい。フランスで親EUのマクロン大統領が誕生して以来、EU分裂への懸念は大きく後退している。それでもEUは、英国に「いいとこどり」を認めることで、EUの原則が形骸化することへの警戒感が強い。
ユーロ圏の1~3月期の実質GDP成長率は前期比0.5%、4~6月期は同0.6%。2四半期連続で英国を上回った。ようやく長期停滞から抜け出す兆しが見え、外的ショックへの耐性が向上したことも、EU側の強気の姿勢を支える。
離脱協議の第1段階の短期決着は期待しづらく、今秋以降、一段と英国のEU離脱をめぐる先行き不透明感が強まることが予想される。
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