日本人の「心」を伝えるインド人クリエーター 新世代リーダー クリエイティブディレクター マンジョット・ベディ

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クルマのCMの色調といえば、日本では晴れわたった空や海といったブルーを使うことが多かったが、新興国各国向けでは、その国独自のアースカラーを取り入れる。それぞれの国でターゲットとなる層があこがれる生活を描き、その生活を実現するトヨタ自動車の性能を見せていく。メイドインジャパンのトヨタを見事に“現地化”した。トヨタ自動車の「オリジン」と、新興国の人々をつなぐ架け橋のようなCMだ。

伊勢神宮には日本のものづくりがつまっている

マンジョットが、日本企業のものづくりに一層魅了されることとなったもうひとつのプロジェクトがある。2008年、仕事で愛知を頻繁に訪れていた際に薦められ、立ち寄った伊勢神宮。足を踏み入れた瞬間、その美しさに感銘を受け、思わず涙が出た。なぜ神道を信仰しているわけでもなく、日本人でもない自分がこれほど感動するのか。目には見えない細部にまで行き届いた気配り、まさにものづくりの「オリジン」と言えるすべてが、伊勢神宮に詰まっていることに気がついた。

聞けば、2013年には、20年に一度の伊勢神宮建て替え行事「式年遷宮」が控えている。その感動と興奮を周囲に伝えたが、なんと周りの日本人の多くが式年遷宮という言葉すら知らない。ショックを受けたと同時に、ここで伝える機会を失えば知らない人たちがさらに増えていくばかりではないかと危機感が募った。

「コミュニケーションを仕事にしてきた自分にとって、この『式年遷宮』をひとりでも多くの人に知ってもらい、伊勢神宮に受け継がれる日本のものづくりの“オリジン”に触れてもらうきっかけを作ること。それこそ、自分が次の世代に残すべきことなのではないか」と感じた。

その思いが通じ2006年より伊勢神宮式年遷宮広報本部の活動を担い、写真と映像の撮影を行った。「式年遷宮」については、学者による書籍などは多数あるがどれも難しい。

「コミュニケーションには2つある。知ってもらううちに、好きになってもらうこと。もうひとつは好きになったことがきっかけで、詳しく知ってもらうこと」。自分の役割は後者だ。これまでにない視点、外国人だからこそ気がつく「音」や「色」に行き届いた気配り、を映し出すため、メンバー構成や撮影手法などこれまでにはなかった大胆な取り組みを試みた。

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