日本人の「心」を伝えるインド人クリエーター 新世代リーダー クリエイティブディレクター マンジョット・ベディ

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50名のスタッフをそろえ、空を舞う「鳥の視線」、地をはう「虫の視線」を意識した、これまでの固定観念では得られなかった新たなアングルで、神様が鎮座されている御正宮をとらえた。伝統ある伊勢神宮の撮影をインド人が行うという取り組みが否定されなかったのは、「撮影は全員スーツで向かいました。神様に敬意を払う姿勢は何よりも大切にしました」という、真の思いが伝わったからかもしれない。編集や音楽も海外のクリエーターが行い、新しい視点をぶつけあって化学反応を起こさせた。

完成したのは、伊勢神宮に流れる「風」や「音」など目には見えない気遣い、誰もが見たことのない角度、など新しい伊勢神宮を映し出したものになった。「ひとりでも多くの日本の若い人たちが、そしてひとりでも多くの外国人が関心を持ってくれることで、伊勢神宮の魅力をもっと知りたいと思ってもらえたら」と語る。

日本に受け継がれてきた伝統行事は次々と消え、生活文化も急速に変化してきた。その流れを止めることは難しい。だからこそ、こうしたコミュニケーションを通じて、日本のものづくり、そして日本文化の「オリジン」を知るきっかけを届けられればという思いがある。

自分の「オリジン」を大事にして、世界に飛び出せ

インド人であること、世界各地で暮らしたことで独自の感覚をつけたこと、日本で挑戦した日々。すべての「オリジン」を自分のオリジナリティに変えて、唯一無二のクリエイティブ・ディレクターとして立ち位置を築いたマンジョット氏。

日本人がグローバル社会で活躍するために必要なことは、日本企業と一緒で「自分の『オリジン』を大切にすること」だと言う。「自分の育った町を知ること、自分の親や祖父母から話しを聞くこと、すごく大事ですよ。海外に飛び出て英語を学ぶこともすばらしいけれど、日本人であること、自分の『オリジン』を無視しては絶対にダメです。個性は自分の『オリジン』から生まれるのですから」。日本を敬愛し、世界を飛び回るマンジョット氏からの熱いメッセージだ。(敬称略)

(撮影:梅谷 秀司)

田中 攝
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