コナミを辞めた小島秀夫が語るゲームの未来 クリエイターを取り巻く環境は激変した<上>

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僕はゲームと映画は似ていると思っています。共に、最新のテクノロジーを使ったエンターテインメントであるがゆえに大きなコストの投入が必要で、それを回収するには巨大なマーケットを相手にしなければならない。ビデオゲームは120年の歴史を持つ映画よりも歴史が浅く、30年前の時点では表現力やマーケットにおいてもかなりの差がありましたが、今はテクノロジーや存在感などの面でも、ようやく追いついた感じです。

小島秀夫(こじま ひでお)/1963年生まれ。1986年コナミにプランナーとして入社。1987年に初監督作品「メタルギア」でデビュー。2001年に米『Newsweek』誌の「未来を切り拓く10人」に選定。2015年12月に同社を退社し、コジマプロダクション設立。ビデオゲーム業界のアカデミー賞といわれる「D.I.C.E. Summit 2016」でHall of Fame、全世界のゲームメディアが選ぶゲームアワード「The Game Awards 2016」でIndustry Icon award受賞(撮影:梅谷秀司)

たとえば、100億円も200億円も投資する大作映画の場合、失敗するわけにはいかないので、冒険がしにくくなる。多くの観客に受け入れられるように、ラブロマンスやカーチェイスといった要素を入れていく、ハッピーエンドで終わるようにする。スニークプレビューで観客の反応を何度もみて、ストーリーの細部まで調整する。さらに投資家の意見も聞かなければならない。そうすると、万人が満足する同じような映画ばかりになります。世界中から集められた才能のある若い監督やクリエイターが次々と大作に登用されますが、彼らが皆、成功するわけでも幸せになるわけでもありません。

大作映画の商業主義にクリエイターの作家性がのみ込まれて、才能が潰されてしまうケースも多々あります。それを嫌ってインディーズで映画を作る監督の作品は、確かにとんがっていて面白いのですが、マスに広がるような大作の規模感はない。映画にしてもゲームにしても、そのバランスが肝心なのです。

映画の場合は、作品ごとに外部から監督を呼んできますが、ゲームは違います。作家性のある大作ゲームを作るためには、最新のテクノロジーを抱え、つねに監督が現場で各クリエイターに指示を出し、細部に目を光らせなければダメなんです。週に1度、スタジオに来て監修作業をするような方法では、新しいものは作れません。これはピクサーやディズニーなどのCGアニメの作り方に近いかもしれません。

ソニーと組んだわけ

――開発パートナーには、ソニー・インタラクティブ エンタテインメントを選びました。

開発中の「DEATH STRANDING」はそうです。最初のプロジェクトへの出資がソニー1社で、シンプルすぎるから危ないんじゃないかと言う人もいますが、そんなことはありません。むしろシンプルなほうが、余計な横槍が入らないのでやりやすい。商業主義と作家性の両立という点でも望ましい関係だと思っています。僕は昔からソニーのファンでしたし、仕事でも長い間、一緒にやってきました。信頼関係もあります。プレイステーションの市場と、僕の作家性との相性もいいのです。

これまでとは違うやり方で、新しいものを作ろうとしている僕らのことを理解してくれていること、それが最も大きいのです。

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