コナミを辞めた小島秀夫が語るゲームの未来

クリエイターを取り巻く環境は激変した<上>

――30年間、コナミで開発を続けてきました。

僕がコナミに感謝しているのは、作りたいモノを提案したら作らせてくれたことです。ゲーム業界の黎明期だったということもあるでしょうが、バジェットを含めた計画を説明すれば「やっていい」と言ってくれました。逆に「こうしなければいけない」という縛りもありませんでした。新人時代は別として、会社から何かをしろと言われたことはありません。あくまで自分からの提案で、こういう狙いで、こういう時期に、このくらいの人材で、こういう未来を見据えて、こういう作品を作らせてくださいと言えばやらせてもらえた。在籍した最後までそうでした。それがあったからこそ今の自分があります。

ただ、この業界も成熟したので、今の若い人たちはそんなに自由にはやらせてもらえないでしょう。ゲームが大作になり、システムやジャンルが出来上がって、固定化した弊害もあるでしょう。新卒採用された開発スタッフはラインに組み込まれ、3年も5年も爆発物やら背景の小物ばかりを作り続けている。作品のごく限られた部分にしかかかわれず、全体を見ることができないスタッフが多くなっています。その結果、どれだけ経験を積んでも自分ではゲームを作れない。その組織のシステムとツールとプロセスを使わなければ、成果物を出せないのです。

ミクロな知識とマクロな視点の両方が持てたのは

――縦割りに分断することで生産性が上がります。

コジマプロダクションはゲームクリエイター小島秀夫が率いるクリエイティブスタジオ。「From Sapiens to Ludens(「人類」から「遊ぶ人」へ)」をスローガンとして、2015年12月、東京にて発足。現在、最新作「DEATH STRANDING(デス・ストランディング)」をソニーインタラクティブエンタテインメントと連携して制作中。世界中のルーデンスにいまだ誰も体験したことのない「遊び」を届けることを信念としている(撮影:梅谷秀司)

ゲームでもハリウッドの映画でも同じですが、たとえば背景プロップやモデルなどのクリエイティブではない部分、メインではない部分は、量産することが求められます。なるべく原価を下げて利益率を上げるために、中国やインド、東南アジアの外注先を使っている。ただ、生産性にこだわりすぎると、新しいクリエイターが社内で育たないという弊害もあります。

僕が入社した頃はそうではなく、5人くらいの開発チームでしたから、1人で何でもやらなければゲームは作れなかったのです。「得意分野が」などと言っていられない。当時は一生でいちばん勉強しながら働いていたときで、毎日3時間くらいしか寝ていなかったことを覚えています。あのときの経験がなければ、ここまで続けてこられなかったと思います。ミクロな知識とマクロな視点の両方が持てたのです。

開発が終わるとチームは解散するのですが、打ち上げなどで彼らと肩を組んで「ずっと一緒にいたいぞー!」と叫んでました(笑)。仕事上では言い合いもしたり、けんかも絶えない日々でしたが、みんな戦友でした。当時はゲームを作っていると言ったら、世間的には変わり者扱いされる時代でした。

実際、コナミで働いていた周りのスタッフも変わった人ばかりで、CD1枚しか出していないバンド崩れの人とか、一度だけマンガ賞を獲っただけの人とか。僕も映画を撮りたかったのに、ゲーム業界に入った人間です。みんな一度は夢破れてゲーム業界に来た人ですが、実は夢をあきらめていない人ばかりでした。ゲームという舞台で夢をかなえようとしていたのです。その頃から10年、20年経ったらゲーム業界はどうなるだろうかという話をしていましたが、予想より早く業界は大きくなりました。

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