スパイダーマンが描く勧善懲悪ではない世界 大抜擢された36歳のワッツ監督に聞く
「スパイダーマンとヴァルチャーの戦いは、ヒーロー対悪者というシンプルな構図ではない。いい人間と悪い人間というふうに、単純に分けられるものではないから。確かに、今の世界はそうだね。残念ながら今、私たちが住んでいる世界は『いい・悪い』の構図にできるほどシンプルではない。
もちろん、現在だけではなく、その意味では、世界はいつも複雑だった。コミックや映画のストーリーではわかりやすくするために、善と悪に分けるなど、シンプルにしていたのだと思う。けれど、もし善と悪だけだったら、物語はとてもつまらないものになると感じている。実際の世界のような複雑さを出すことが、ストーリーの面白さにつながっていくと思うんだ」
変化する主人公のスパイダーマン像
ヒーローが15歳という設定は、同じ高校生だった前作までと比べても、やや若い。インスタグラムでスパイダーマンの活躍をアピールして、スーパーヒーロー集団「アベンジャーズ」の仲間入りを果たしたいという現代的な野望を抱えている。それが、学生生活や、スパイダーマンの活動を通して、手痛い失敗を繰り返しながら、成長する。その様子が丁寧に描かれていく。
――ヒーローが目標とするスパイダーマン像が、始めと終わりでは変化を遂げますね?
「スパイダーマンである、15歳のピーター・パーカーは『人を助けたい』『スーパーヒーローの一員になりたい』という夢がある。けれど、現実の世界はやはりもっと複雑なんだ。スーパーヒーローになって世界を救うという野望は、彼の立ち位置からすると、かけ離れている。
そのことに彼もだんだん気がついていくんだけれど、自分がいる場所で何ができるか、彼が所属しているコミュニティをしっかり見ることができるようになって、本当にヒーローとして力を発揮できるようになる。なぜなら、彼は特別な力を与えられてはいるけれど、1人の人間にすぎないのだから」
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