激変する不動産ファイナンス--外資撤退で迫る”9月クライシス”
ムーディーズの統計によれば、08年上期の発行額は前期比5割減の2500億円。減少の要因は外資系レンダーの不動産ノンリコースローンの新規融資の減少に尽きる。07年の発行額は2兆円を上回る水準だったが、今08年は早くも1兆円割れが確実視されている。
現在の不動産融資市況は完全に邦銀の貸し手市場に転換している。当然だが、CMBS同様、基準となるTIBOR3~6カ月物に乗せられる不動産ノンリコースローンのスプレッドはワイド化が進んでいる。信託銀行関係者は「一概にはいえないが、昨年まで50bp強ぐらいの案件があったとしたら、3ケタは確実。場合によっては100bp台後半も取れる。市場が03~04年ぐらいに戻ってきた」と笑う。ファンド関係者は「現在は金利上昇を抑えるすべはない。リファイナンスをしのぐには、(貸出金の)ロットが必要。銀行サイドの条件をのまざるえない。彼らも一件一件を吟味しており、泣き落としが効く雰囲気がない」という。
不動産融資に関して邦銀を巻き込んでムードが変わり始めたのは昨年末。米欧銀の決算によりサブプライム危機が深刻化。クレジットスプレッドもハネ上がり、米欧銀の事業縮小が本格化する。08年の年明けからノンリコース市場は氷河期に入り、以来、状況は変わらないままだ。
ただ、邦銀とて安穏とできる状況でもない。08年春には関西のファンドのレイコフが民事再生法の適用申請を行い、事実上、経営破綻。直近では、パシフィック・ホールディングスが業績悪化から大和証券グループ本社の出資を仰いだ。ファンドに限らず、スルガコーポレーションやアーバンコーポレイションの経営破綻はいわずもがなだ。
ある大手邦銀の平均LTV(担保掛け目率)は07年74%に対し、今年は70%。邦銀全般にみてもおよそ5%内外は低下しているようだ。LTV低下を補うメザニンレンダーも「4月以降、完全に消えている。リース会社の要求利回りが高すぎて借り手も借りられない」(関係者)状態だという。