働きやすさを追求したら「無断欠勤OK」になる

小さな工場の人を縛らない働き方

なんと「無断欠勤」がルールなのだから、たとえ良かれと思っても連絡するのはルール違反。この工場においては秩序を乱す行為として、むしろとがめられるというのだから発想の転換といってもまだまだ「ほんとうですか?」という気持ちになる。

「嫌いな作業をしなくてもよい」というのも、それで本当に仕事が回るのかと頭の中が「?」でいっぱいになる。仕事には嫌な仕事だってあるだろう。けれど誰かがそれをしなければならないのは世の常ではなかろうか。

この工場は冷凍の天然のエビを原料に、むきエビやエビフライなどのお惣菜を作っている。エビの殻をむいたり、串で背ワタを抜いたり、パン粉をつけて揚げたり。さらに計量から包装、箱詰め、出荷、掃除などいくつもの工程があって、それらをすべて手作業で行っている。そのさまざまな作業について、なんとこの工場では従業員にアンケートをとるのだそうだ。好きな作業には○、嫌いな作業には×、どちらでもないものについては空欄にしておく。

すると不思議なことにそれぞれの好みは思った以上に多様で、嫌いな作業は重ならなかったのだ。自分が嫌いな作業はみんなも嫌がると思いがちだが、自分がやりたくないことを、むしろやりたいと思う人がいるというのは、思いもよらない結果だった。さらに面白いことにその好き嫌いは、時間をおくと変わる。定期的にアンケートをとるが、やはり作業の好みはその時々でちゃんとばらけて、誰もやらない工程というのは発生しないそうだ。

目指すのは「居心地のいい会社」

武藤さんが目指すのは「居心地のいい会社」である。

“僕は根本的には仕事というものは、楽しみではなく、生きていく手段に近いものだと思っています。そのうえで、「働きやすい職場」を作るというのは、従業員一人一人が仕事をどのように感じていようと関係なく、会社がひたすらに職場環境や人間関係を整え、誰もが居心地がいい状態を目指すことだと思っています。”

“仕事は必ずしも楽しいものではないけれど、そこで居心地よく働けることは大事であり、その結果として楽しみがついてくる可能性はある。”

だったら徹底的に働きやすくしよう。武藤さんの挑戦が始まったのだ。

実は武藤さんの会社はかつては石巻にあった。が、東日本大震災で被災し、大阪に移転。二重債務を抱えながらの再出発だった。ところが、再起をかけて奔走する中、石巻時代からの工場長が突然退社してしまう。信頼してすべてを任せていたといえば聞こえはいいが、実のところ様々なことを押し付けていたのではないか。自分のことばかりで従業員の気持ちを考えていなかったのではないかと、自らを振り返らざるをえない状況に陥る。

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