やさしい麦茶CMが炎上なしで母を描けた理由 秘密は「歌」と「キャラ」にあった!
ユーモラスさを演出するうえで重要な役割を担っているのが、CMソングと、怒ったママが変化(へんげ)する「モンスター」たちだ。
このCMを手掛けた電通クリエーティブディレクターの赤松隆一郎氏は、歌を作るうえでのポイントを「子どもがすぐ覚えられる、お母さんも一緒に歌ってくれそう、メロディラインが複雑すぎない」ことだと指摘する。赤松氏は、「歌の強みは、知らないうちに記憶に残ること。強引に人の心をかき分けて踏み込むのではなく、気づいたらいつの間にかそばにいるという感覚」とCMソングの効果を分析する。したがって、「CMの曲は、100%鼻歌で作る」という。思わず口ずさんでしまうようなメロディがキモなのだ。
さらに、モンスターの設定にも仕掛けがある。ママの怒った顔は、なぜシーサー、ジャミラ、モアイなのか? 赤松氏は、「ちょっとこわい、けどかわいい、そして見た人が なんで!?となる突っ込みどころ(すき間、のようなもの)がある」と理由を語る。
CMをよく見ると、シーサーはママチャリに乗り、後ろの補助いすには、ヘルメットをかぶった子どもが座っている。口から火を噴くジャミラは、お料理中なのか花柄のエプロンをつけて右手におたまを持っている。無表情で迫ってくるモアイは白いエプロン姿。思わずニヤリとしてしまう細部へのこだわりだ。
また、その登場順にもこだわった。「シーサーはみんなが知っている。その次のジャミラは、知らない世代もいるので、あえてよくわからないものを真ん中に1個交ぜた。見た人が調べたり、ネタにする可能性もある。歌ってみての言葉の響き『じゃ・み・ら』も考慮して選んだ。最後のモアイは、ママが『まったくもう……』と怒りたいのを我慢してぷるぷるしている様子なのだという。
ジャミラとモアイの歌の途中で商品をゴクリと飲んだムギちゃんは、歌い終わるとすっきりした表情になる。ナレーションの「やさしいのがいちばん」に合わせて、やさしいママが大好きとばかりに満面の笑顔を見せた。
ムギちゃん役のなぎさちゃんは、グリーンダカラちゃんこと、しずくちゃんの実妹。姉妹初共演で登場したのが2013年7月。2015年には、CMソロデビューを果たし、初々しくて愛くるしい笑顔を披露した。今まではセリフもなかったなぎさちゃんが歌に挑戦するという成長ぶりに、CM制作スタッフ陣だけでなく、視聴者も大いに驚かせた。
東京ガスのCMに、全母が涙腺崩壊!
次に、息子から見た「お母さんあるある」のCMも紹介しよう。2014年10月から2016年10月まで放送されていた東京ガスの企業広告、家族の絆シリーズ「母とは」篇は、渡辺えりが演じる母親の日常を、息子役の岡山天音が淡々と解説をしていく、「お母さんあるある」がつまった作品だ(放送は関東エリアのみ)。
母が突然息子の部屋に入る。ノックはしない。チャーハンを「チーハン」とメールで誤打する。息子が着なくなったジャージーを着て「どう?」と得意げに見せる。いきなり「彼女できたでしょ?」と鋭い勘でドキッとさせる。なぜか夕飯に食べたかったメニューが並ぶ。息子からのプレゼントには、申し訳ないほど大喜びをする。家族のために「誰よりも遅くまで起きていて、誰よりも早く起きてる」母のことを、息子はちゃんと知っている。そしてある日、母が「いつの間にか年を取ってる」ことに気づくと、切なくて温かい感情が込み上げてくる息子。CMに描かれた普通の日常の中に、ふと感じるかけがえのない親子の絆と愛が込められている。
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