日本企業は、なぜこんなにM&Aが下手なのか

そもそも買収に消極的すぎる

もう1つの理由は、買収後の統合に失敗する例が多いことが挙げられる。スタートアップ企業を買収した後、大手企業は起業家精神にあふれる創業者に対して融通の利かない人事システムを押し付けようとしたりするため、スタートアップ企業出身者たちは、買収前に享受していた権威や自由、そして市場原理に基づいた賃金を奪われることになる。

たとえば、日本の大手企業は35歳のスタートアップ企業のCEOに対して、社内のほかの35歳に払っている賃金しか払わないかもしれない。起業家精神にあふれる創業者がこれに我慢できずに買収の後すぐに会社を去ってしまえば、買収した部門は低迷してしまう。

日本型人事システムが「障害」

少しずつ変わりつつあるものの、全般的に日本企業は、欧米企業と比べて株主の利益を最大化するのにプレッシャーに鈍感だ。オープンイノベーションを促すような欧米の優遇税制も日本には導入されていない。

しかし、日本企業がオープンイノベーションや買収に消極的になる最も大きな理由は、従業員を業績ではなく年齢で昇進させる日本型の人事システムにある。「日本のハイテク業界を改善するためには、まずは人事システムを変える必要がある」と倉林氏も指摘する。

日本政府が、2020年までに実質GDP成長率を平均2%(現在の成長率の2倍)にするという目標を達成するためには、有意義で包括的な労働改革が必要だ。そうしなければ、オープンイノベーションやほかの形の創造的破壊などを通じて、個人の能力を最大化するために人材を適切に再配置することもできなくなる。

日本企業はゆっくりとだが、変わりつつある。現在、日本の大企業が雇う社員のうち、非正規労働者は4分の1を占めている。能力と技術を持つ従業員は、ますます(いくつもの職を同時に追求する)「ポートフォリオ・キャリア」を極める傾向を強めており、ある企業で1つのプロジェクトを終えた途端、次の企業に移るという人も少なからずいる。

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