日本企業は、なぜこんなにM&Aが下手なのか

そもそも買収に消極的すぎる

ただし、多くの企業は新興企業が破綻するリスクを嫌う。このため、日本ではスタートアップを「支援する」という形の提携がメジャーになっているのである。「もちろん(新興企業にとっては)何もないより支援があったほうがいい」と、米国と日本のVCに15年間勤めている倉林氏は話す。

こうした提携関係にもリスクがないわけではない。提携した企業が成功した際、競争相手が買収してしまい、もともと支援していた大手企業には何の見返りもなくなるリスクだ。

M&Aに長けている社内人材がいない

シリコンバレーに本社を置く顧客情報管理(CRM)大手のセールスフォース・ドットコムを例にとって考えてみよう。同社は、自社のコーポ―レート・ベンチャーキャピタル(CVC)部門を通じて、革新的なスタートアップに投資している。

たとえば、ある新興企業が、セールスフォースが活用できる革新的なアプリケーションを開発したとすると、その企業に出資しているセールスフォースは、第一先買権を行使してその企業の将来的な投資ラウンドに参加することができる。また、早い段階から関係を構築することで、この企業のビジネスや経営陣について理解を深めることができるため、戦略上適切な時期にその企業を買収できるチャンスが高まる。

多くの日本企業にもCVC機能があり、実際、日本のスタートアップ投資の約80%は大企業によって行われている。しかし、日本企業が買収まで進むことはまれである。

その理由の1つは、有望な新興企業を発見し、その企業を良い方法で買収する才能を持つ人物が大手企業の社内に不足していることだ。大手企業が買収を成功させるためのスキルを獲得するためには、外部の専門家を、CEOの給料を超えることもある市場価格で雇う必要がある。

ただ、「(日本の)大手企業は文化的に言って外部の専門家を高額で雇い入れることはできないだろう」と倉林氏は指摘する。大手企業はその代わりに、買収業務をM&Aの経験に乏しい社内マネジャーに委ねてしまうのである。

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