太陽電池・世界大バトル! 台頭する中国・台湾、半導体・液晶での成功を三たび再現へ
耳に入るのは中国語ばかりだった。今春、日本で初めて開かれた太陽電池の国際技術見本市。最も大きく展示ブースを構え多くの来場者を集めたのは中国の新興企業、サンテック・パワー。来場者も中国と台湾のビジネスマンが目立った。「この数年で産業の“地殻変動”が起こったことを、あらためて実感させられる」。日本のメーカー関係者は、にぎわう会場でつぶやいた。
世界の太陽電池市場において、日本は長く技術と生産規模の両面で他国を圧倒してきた。2002年、日本は世界の太陽電池の生産シェアのほぼ半数を獲得。以下には欧州と米国がそれぞれ2割で続いていた。だが当時、影も形もなかった中国・台湾がそれから5年で急成長、07年には世界生産量の3割を占めるまでに台頭したのだ(右グラフ参照)。独Qセルズなど欧州勢の順調な拡大も相まって、日本のシェアは半減の勢いで大きく後退している。
台頭する中華勢力の代表企業がサンテックだ。オーストラリアで太陽電池技術を学んだ施正栄(シ・ジェンロン)最高経営責任者(CEO)が、中国江蘇省・無錫で01年に創業した。生産設備を倍々ゲームの勢いで増強。同時に中国国内や韓国、欧州のシリコンメーカーと向こう数年にわたる長期購入契約を結び、原料の安定調達体制を整えた。07年は深刻なシリコン不足で日系メーカーが生産減をやむなくされたが、この年サンテックは前年比約2・3倍の年産364メガワットを達成し、世界3位に浮上した。
「08年も設備増強を続け、年産能力を1ギガワットに倍増させる。さらに10年には2ギガワットを目指す」。サンテックのグラハム・アーテス最高執行責任者は言う。この計画が実現すれば、08年末の年産力はシャープを上回る見通しだ。
躍進する中国勢は同社にとどまらない。太陽電池の前工程であるセルや後工程のモジュールを生産する企業は100社を超え、その中にはチャイナ・サナジーなど年産能力が200メガワット級という大手もある(下表参照)。この年産能力は日系では京セラに匹敵する。「日本のお家芸の裾野が急に広がり、予想もしていなかった地域で成長の芽が出てきた」。日系メーカーの関係者は苦々しい表情で語る。