過去の成功がモティベーションを減退させる?
まず大リーグのレッドソックスは松坂獲得に120億円を払い、松坂投手はその半額60億円を手にしたともいわれる。別にこれが原因で長期的に駄目になったとは言わないが、人間、金融の投資ビジネスでもなんでも、大儲けしすぎたファンドマネジャーに、次回おカネを任せるのを渋る投資家は結構多い。これは、人間とは大儲けしてハングリー精神が消えると、大きく勝とうとか成長しようとか必死に努力しようとか、必死に頑張るインセンティブが消えてしまうからだ。
わが母パンプキンは、阪神の井川投手の例も入れるよう進言してきたのだが、井川投手も松坂選手が作った巨額トレードの前例のおかげか、巨額のトレード金を手にしたものの、大リーグでは全然活躍できずにすぐ解雇されてしまい、日本に帰ってきた後も活躍できず1軍にも入れず、メディアからも忘れられつつある。
別に松坂選手や井川選手がそうだと断言するわけではないが、一般論として若くして人生何回も生きられるほど大儲けしてしまうと、ハングリー精神が消えて何かとゆるみが出るのは、どの業界も同様に起こりうることである。
ここでの教訓は、人を採用したり会社に投資をするときは、その人/会社の経営陣が今後も全力で能力を発揮するハングリー精神や情熱をもっているかどうかの見極めが 、極めて重要だということである。
長続きしないトップスターより、継続性ある一流選手
また松坂選手には、肥満やひじの手術など体調管理の面での批判も目立った。一時の日本球界のエースが若くして調整不足を批判される様は、才能や運による瞬間風速の短期間の好調ではなく、体調管理を徹底して謙虚に努力を忘れず、長期間勝ち続ける選手こそ大投手なのだということを、改めて思い知らせてくれる。
プロとは何か、を考えたときに、特にオペレーションの世界では“品質の安定性”を提供していることが重要なわけだが、人生の中で数年といった瞬間風速ナンバーワンの昔横綱だった双羽黒(私の好きなビガロに勝ったので、いまだに私は怒っている)より、20年とかのプロフェッショナル生活を通じて一貫して上位10%に入る、といった安定性を見せた魁皇関のほうがプロのアスリートとしてよっぽど立派なのだ。
これは投資のパフォーマンスが1年や2年、3年とかだけ圧倒的によくて、その年だけ稼いで後はぱっとせず、最後は解雇されるファンドマネジャーと、20年も30年も、まずまずの成績で勝ち続け、60歳になっても70歳になっても会社に請われて後進の指導にあたっている元ファンドマネジャーとの違いを髣髴させる。
教訓としては、あなたの会社で人材採用するとき、短期間だけナンバーワンでその後、長期減速するタイプにビッドで破格の投資をするより、決して1位のスーパースター選手にはなれなくても、安定的に質の高いパフォーマンスを長年発揮してくれる人材をリクルーティングするほうが、採用した後の費用対効果、人材投資リターンがはるかに大きい、ということだ。
なお業界のトップパフォーマーは、すぐ他社に引き抜かれたり値上げ交渉をされるので、企業にとってはコストパフォーマンスが結果的に悪かったりもするのだ。
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