書籍編集者からの忠告:野球にもう手を出すな
私は昨日、来日初日のディナーを東洋経済の皆さんと銀座の“魚真”で過ごしたわけだが、私のコラムの書籍化を担当する東洋経済の方から、以下のように「もう野球ネタを書くな」と教え諭された。
「ムーギーさん、あのね、専門外の分野で書くと、どうしても床屋談義の粋を出なくなって、ご自身のブランドに傷がつきますよ。金融とかグローバルキャリアとかでしたらさすがに専門性がすごいんですけど……。基本、自分の見てきた分野で名前を売って、そのブランドの上で違う分野でも売って、というのがこの業界、鉄板なんですね。
たとえば佐藤優さんは、外務省で見てきたことを書いてブランドをつくって、名前をつくったうえで、そこから読書術とかの本も売っていくわけですよ。いきなり野球とかアイドルとか書くと、ブランディング上、危ないです」
(で、焼酎の水割りを一気に飲み干して大きな岩ガキを頬張った後で)
「あのね、マーケティング感覚のあるライターは潰れる、というハナシがあるんです。今、何を書いたら読者の関心が得られるかわかってる人って、自分のコアの分野から離れてでも読者が読みたい分野のことを書くので、世間話としては面白がってくれるかもしれないんですけど、オンラインでタダで見られるから見てくれてるだけで、本のコンテンツとしては絶対買ってくれないんですね。
今、出版不況ですし、またみんなおカネも持ってないですから、1500円の本を買ってもらうってものすごく難しいんですよ。今、1万部売れたら御の字、という時代になっていますしね」
(こんどはビールを一気に飲み干した後で、)
「とにかく、なんか人生に役立つとか、スキルアップするとか、そいういうのがないと財布のひもは開いてくれないですよ。メディア業界ってね、100円のものを150円にするのはまだできても、0円のものに1円払ってもらうのは、途方もなく難しいんです。野球ネタとかアイドルネタとか書かれても、書籍版には入れませんから、覚悟してくださいね。もう野球ネタとかアイドルネタ、やめましょう」
このように言われ、本業の金融やグローバルキャリア関連のコラムをもっと書くように教え諭されたのが、(来日したての)つい昨日の夜の出来事だ。
したがって私はこのコラムで、専門外の野球について書くのははばかられるのだが、その担当者の方がこのコラムを読んでいないことを祈りつつ、長かった前置き(今日は前置きのほうが長いという説あり)を終えて、本日は松阪選手の不調について、ビジネスや投資に共通する教訓という観点から、思うところを述べたい。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら