松坂投手の不振に思う、採用戦略のあり方 グローバルエリートが野球にまた参戦?

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オーバースペック社員を雇うときの注意事項

最後の重要な教訓が、“スーパースターだった選手”を決して彼等の第1志望ではなかった皆さんの会社が雇ったとき、果たして全力で頑張ってくれるかということだ。言い換えれば、あなたの会社のポストに対して、いわゆるオーバースペックの人を雇うときの注意事項である。

たとえば元大リーグで通算ホームラン300本、打率3割とかなのだが、38歳でFAになり、大リーグでは条件が折り合わずに日本に年棒2億円とかで出稼ぎにきて、2週間くらいバットを振って、腰痛治療のため本国に帰って戻ってこない、といった謎の元大リーグスラッガーは少なくない。ちなみに彼らは活躍すると、日本のファンがその名を覚える前に大リーグに呼び戻され、結局、すぐ帰ってしまう。

同様に日本人選手で大リーグまで経験して、向こうで通用しなくなって日本のパ・リーグなりに戻ってきて、3試合くらい投げて防御率6くらいの成績に終わり、2軍で調整とかいってそのまま表舞台からフェードアウトするのも、どこかで聞いたような話ではないか。

この“落ち目社員による恩知らず現象”は、金融の世界でも共通した現象が見られ、新卒から某欧州系投資銀行で活躍してきたのに、10年後、リーマンショックで解雇の憂き目に遭い、不本意ながら国内の証券会社に都落ち感を覚えながらも職を求め、マーケットが1年後に戻ればあっという間にゴールドマンに転職してしまうケースを思い出してしまう。

ここでの教訓は、能力的には十分高くて、むしろオーバースペックな人財でも、自社への本質的な志望動機が低い人を雇えば、彼等は心の底では“次のやりたい仕事が見つかるまでの腰掛け”程度に思っていることが多いということだ。

金融危機以降、大量に外資系投資銀行の友人が解雇されたわけだが、彼らが難なく日系の同業他社や他業種に仕事を得た後、最近の株高でさっさと外資金融にあっという間に再転職している。そんな様子を見ると、“苦しいときに手を差し伸べてくれた会社への恩義”などは“目の前のボーナス”の前に、あっという間に吹き飛ぶのだな、と痛感してしまう。

私たち”東洋経済オンライン御一行様”は、現代人の身勝手さと”まだまだ優秀でも、ピークを過ぎてしまった人を雇う危険さ”に深いため息をつきつつ、最後の鍛高譚をロックで胃に流し込んで、銀座の夜に繰り出すのであった。

(追伸)その銀座の夜に衝撃の事件が起こったわけだが、その真相は本日、東洋経済本社で行われる私の講演会にお越しの方だけに、そっと耳打ちさせていただく所存である。

ムーギー・キム 『最強の働き方』『一流の育て方』著者

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Moogwi Kim

慶應義塾大学総合政策学部卒業。INSEADにてMBA取得。大学卒業後、外資系金融機関の投資銀行部門にて、日本企業の上場および資金調達に従事。その後、大手コンサルティングファームにて企業の戦略立案を担当し、多くの国際的なコンサルティングプロジェクトに参画。2005年より外資系資産運用会社にてバイサイドアナリストとして株式調査業務を担当した後、香港に移住してプライベート・エクイティ・ファンドへの投資業務に転身。英語・中国語・韓国語・日本語を操る。著書に『世界中のエリートの働き方を1冊にまとめてみた』と『一流の育て方』(母親であるミセス・パンプキンとの共著)など。『最強の働き方』の感想は著者公式サイトまで。

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