工具の老舗「OSG」が乗り出す宇宙への挑戦 ベンチャーとの出会いから新ビジネスを開拓
「行き先はまだわからない。まずは宇宙船の乗車券を買ってみた」
愛知県の老舗工具メーカー、OSGで技術開発を統括する大沢二朗常務はそうつぶやいた。OSGの”夢”を乗せた宇宙船とは、宇宙ゴミ(デブリ)除去の事業化を目指すベンチャー、アストロスケールのことだ。7月14日、OSGは航空大手ANAホールディングスなどとともに、アストロスケールに28億円を出資したと発表した。
「大きな宇宙デブリは今のうちに除去しなければ、宇宙が持続可能でなくなってしまう」。発表当日の記者会見でアストロスケールの創業者、岡田光信CEOは強く訴えた。デブリの正体は、宇宙での役目を終えたロケットや人工衛星の破片だ。調達資金を元手に、人工衛星の打ち上げに向け加速し、デブリ除去ビジネスの本格展開へとつなげる。
工具メーカーが”宇宙進出”する真意
一方、出資先として話を振られた大沢常務は開口一番、「切削工具メーカーがなぜここにいるのか、疑問に思われるかもしれない」と話した。宇宙と切削工具――。遠いようで、実は密接な関係にある。
アストロスケールが2018年初旬に打ち上げを予定する衛星「IDEA OSG 1」。これは地上のレーダーでは把握できない微小なデブリを計測するものだ。地球の軌道上には1センチメートル以上のデブリが約75万個あるともいわれる。デブリの実態を正確に把握することで、除去事業の展開に弾みを付ける狙いがある。
OSGは2015年12月、「IDEA OSG 1」打ち上げプロジェクトのメインスポンサーとなった。OSGは数億円単位の資金支援と技術提供を行っている。
この衛星の底面には「フランジリング」と呼ばれるアルミ製の部品がある。打ち上げ時にロケットと結合させる部分で、飛行姿勢を保つのに重要な役割を果たすという。OSGは、このフランジリングの加工を担った。
ロケットや衛星の部品は、精密性や耐久性が求められる。金属部品の場合、塊から削り出して作られるが、加工はミクロン単位であり、工作機械や工具の性能がモノを言う。OSGは今回のプロジェクトのため、専用の特殊工具を開発した。
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