前代未聞、監査法人が金融庁を提訴したワケ 「処分勧告」は内部文書?金融庁が驚きの説明
勧告が公表されたのは棄却から約2週間後。勧告とその公表の差し止めを求めていたのに、勧告され、公表もされてしまった。
そこで7月3日付で「勧告内容がCPAAOBのHPに載り続けているので、これの差し止めと、違法な勧告と違法な公表によって受けた損害の賠償、加えて違法な公表によって受けた名誉毀損への謝罪広告請求に変更した」(代理人の倉科直文弁護士)という。
公表そのものが「社会的制裁」効果
CPAAOBの勧告は、行政処分が決まる前にその事実が公表される。このことはステークホルダーが、早期にその事実を知ることが可能になる一方で、処分が決まらないうちに勧告対象者は社会的制裁を受けてしまう側面を持つ。
同様のことは、証券取引等監視委員会が金融庁長官宛てに勧告をする、課徴金制度にも言える。
本来、勧告段階で公表するという制度の主旨は、議論を表に出すことにある。結果的に実際の処分が行われる前に社会的制裁を与えてしまうのは、国民が行政の判断を盲信すること、加えて処分対象者が反論しないことで起きてしまう。
もう1つ、今回の一件が示しているのは「仮の差し止め」に対して裁判所が下した判断は、「勧告及びその公表は、対象者に甚大な被害を与えるにもかかわらず、止められない制度になっている」(茂木氏)という点にある。
ただ、アリアには業績不振企業の監査を手掛ける機会が多く、「業績不振企業の駆け込み寺」との風評がついて回っている。
その点は代表社員の茂木氏も認識しているが、「監査は公認会計士の独占業務。やりたくないからやらないなどと言っていいわけがない。業績不振企業でも上場会社ならどんな会社にも監査を受ける権利がある。だが、不正は許さない。引き受けたからには徹底的にクリアにする。そのせいで上場廃止になってもそれは仕方がないこと」と言い切る。
それだけに、「不当に傷つけられた信用は回復したい。泣き寝入りはしない」(茂木氏)という。
監査法人が監督官庁の金融庁を訴えるという前代未聞の裁判は一体どうなるのか。そして勧告の位置付けも変わって行くのか。制度そのものが問われている。
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