「全国の駅弁を売る店」が東京駅にあるワケ 使命は「地方の駅弁業者を元気にすること」

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東京駅につくられたのは、人の多い東京に各地の駅弁を集めることによって、地方の駅弁業者を生き残らせることが狙いだ。広報室副部長の泉和夫さんは「『駅弁屋 祭』で弁当が売れることで、地方の駅弁屋さんが元気になれる」と語る。

地方では地元の駅を利用する人が少ないため、駅弁を数多く売ることは難しい。「郡山駅の駅弁業者では1日に売れる数が100個いかない。米沢駅では2つある業者のうち、売れているほうでも1日100個程度。これを『祭』で売ればもっと売れる」(泉さん)というわけだ。

輸送できない弁当は「実演」で

では、「駅弁屋 祭」で販売される駅弁は、どうやって選ばれているのだろうか。

倉持さんは「自分たちで食べに行くことで、情報が集まる」という。この事業を担当している人が各地の駅弁を食べ歩き、そこで情報を仕入れるのだ。その一方で、駅弁業者から売り込みを受けたものについてもひとまず置いてみる。まずは地元に根付いた駅弁を置くことが方針なのだという。現在は約60社の駅弁業者と取引しているが、「全駅弁業者の駅弁が並ぶのが理想」(倉持さん)だ。

各地から駅弁を運んでくる方法は、地域によって異なる。新潟や米沢(山形県)、郡山(福島県)などそれほど遠くない地域のものは保冷車で輸送し、米沢や郡山などエリアが近い場合は一緒にまとめて運ぶ。これより遠いところのものは航空便で輸送する。

実演販売のコーナーはお祭りの屋台のよう(筆者撮影)

だが、鮮度が重要だったり、食材が傷みやすかったりする駅弁はどうするのだろうか。たとえば大館駅(秋田県)の「鶏めし」は、添加物を使用しないという方針でつくられている。そのために設けられているのが実演販売のコーナーだ。輸送手段がなかったり、食材が痛みやすいものだったりする場合は、実演販売で売ってもらうことになるという。

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