「全国の駅弁を売る店」が東京駅にあるワケ 使命は「地方の駅弁業者を元気にすること」

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入ってすぐのところには肉や魚の駅弁を集めたコーナー。特に肉の弁当はよく売れるという(筆者撮影)

「実演のものは、ほんのりあたたかい」と倉持さん。「実演があるから、販売条件をクリアできる弁当もある」と泉さんは言う。このような工夫で、全国各地の駅弁を集めて販売しているのだ。

ランキングには入ってこなくても、手間をかけたいい弁当もある。そういった弁当は販売数が少なかったり、製造元から数多く持ってこられなかったりといった事情で、人気はあっても数字では上位に入りにくい。肉をメインにした駅弁などは特によく売れるというが、そのほかにも魅力のある弁当は数多くある。「幕の内弁当は手間がかかる。幕の内みたいなものに日の目を当ててほしい」と泉さんは言う。

頑張る地方業者を応援したい

駅弁は列車での移動中に食べることを考えてつくられた弁当だが、百貨店などで開催される駅弁大会では、従来から自宅に持って帰って食べる人が多かったという。泉さんによると、「駅弁屋 祭」についても「行ってみたいところの駅弁を食べて、その土地への思いを膨らませるという需要が増えている」という。各地の駅弁が常時購入できる「駅弁屋 祭」は、新たな駅弁の消費行動を生み出したのだ。

泉さんの駅弁への思いは深い。駅弁掛け紙のコレクターでもある泉さんは、『駅弁掛紙の旅』(交通新聞社新書)という本を出したほど。「駅弁文化には130年の歴史がある。その文化を絶やしてはいけない。駅弁が頑張っているところは応援したい」と泉さん。その思いが、日本最大級の駅弁アンテナショップを成立させている。

各地の魅力ある駅弁を手に入れられることで人気の「駅弁屋 祭」。一方で、この店には苦しい状況にある地方の駅弁業者を助けるという趣旨がある。東京駅という大ターミナルにあるからこそ数多くの駅弁が売れ、それが地方色豊かな駅弁の文化を守り続けることにつながっているのだ。

小林 拓矢 フリーライター

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こばやし たくや / Takuya Kobayashi

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学卒。在学時は鉄道研究会に在籍。鉄道・時事その他について執筆。著書は『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。また ニッポン鉄道旅行研究会『週末鉄道旅行』(宝島社新書)に執筆参加。

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