金正恩の大暴走をロシアが手放しで喜ぶワケ

米国には目障りな中国・ロシア戦線

北朝鮮によるミサイル発射後も、トランプ大統領はまだ、中国が「北朝鮮に対して厳しい姿勢を取り、このばかげた行為を今回限りで終わらせるはずだ!」と望みを抱いていた。

しかし、今の米国には(トランプ大統領以外に)中国に期待している政治家はほとんどいない。それは、トランプが必死になって習国家主席をフロリダに招いたときも同じだ。それどころかトランプ政権は、台湾への兵器販売の再開や、中国の違法な輸出に対して関税を増やすと脅迫するなどして、中国政府をいらつかせてきた。

ロシアが北朝鮮に近づく理由

こうした中、トランプ大統領はドイツへ向かう直前、「中国との協業はもはやこれまでだ。が、挑戦しなくてはならない」といらだちをあらわにしたツイートをしている。

いまや米国は、中国には頼れず、「かつてないほど強いロシア―中国戦線に直面している」と、アジア太平洋地域の専門家であるアルチョム・ルーキン・ロシア極東連邦大学教授は話す。

「中国とロシアは、少なくとも朝鮮半島に関しては、米国の北東アジアにおける顕著な戦略的支配を大幅に弱めたいと望んでいる」とルーキン教授は指摘する。 「北東アジアにおける軍事戦略的存在感を弱めるなど、米国が新たな安全保障体制に移行する準備をしない限り、中国とロシアは引き続き北朝鮮を破綻させないようにし、あらゆる厳しい圧力から守るだろう」。

同教授はまた、北朝鮮危機に中国が介入するというトランプ政権の考えをこう否定する。「習近平が、重要な地政学的価値がある北朝鮮を、米国の貿易譲歩と引き換えに放棄することを期待するのは最初から甘い考えだった」とルーキン教授は話す。 ロシアもまた、北朝鮮に関して米国と協力することはありえないという。

「ロシアはもちろん、北朝鮮の仲間ではない」と、プーチン大統領の「アジア回帰」を注意深く観察しているカーネギー・モスクワ・センターのドミトリー・トレーニン所長は話す。「確かに金一族は強情で難しいが、ロシア政府は北朝鮮の指導者を『わけがわからないヤツ』だとは、実は思っていない。ロシア政府は、北朝鮮にとって核兵器は金体制存続のために必要なものだと理解している。おそらく金正恩は、サダム・フセインや、ムアンマル・カダフィの顚末を見てそう考えているのだろう」

トレーニン所長が5月に記したところによると、ロシアの北朝鮮政策は2つのことを目的として練られている。1つは、ロシアが恐れる米国による韓国内での軍事行動を止めること、そしてもう1つは、中国と戦略的アライアンスを締結することだ。

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