OPEC減産延長でも原油価格が上がらない理由 先行き50ドル台を超えて上がる可能性は?

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一方の需要面も足元では力強さを欠く。米国では需要が盛り上がる夏のドライブシーズンにもかかわらず、ガソリンの需要が減っている。ガソリンの小売価格が前年より上がったことや、国内景気のピークアウト感が背景にありそうだ。中国・インドも成長は鈍化しており、大幅な需要増は見込みにくい。

米国の利上げで投機資金も引き揚げ

さらに2014年、米国連邦準備制度理事会(FRB)が量的緩和を終了。2015年12月には9年半ぶりの利上げに踏み切り、2016年12月から3回利上げを続けている。これに伴い、これまで大量に原油市場に流れ込んでいた投機資金が引き揚げられたことも、原油安の一因となった。

こうした状況を考慮すると、「2018年前半までは1バレル=40~50ドルで推移するが、5ドルほど上振れ・下振れ余地がある」(JOGMECの野神氏)、「1バレル=45ドル前後が続き、年末でも50ドル程度」(ニッセイ基礎研究所の上野剛志・シニアエコノミスト)との見方が強い。当面は供給過剰になりやすく、価格が上がりにくいようだ。

日本は国内で消費する原油のほぼ全量を輸入に頼っている。消費国の日本にとっては、原油安は歓迎すべきことのようにも思えるが、実際はどうなのだろうか。「日本の実体経済にとってはプラスになる」と話すのは、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘・投資情報部長。石油化学製品の原料コストや、運輸業のエネルギーコストが下がるからだ。

ただ、「原油安で日本の株価が上がるかどうかは、また別の話」(藤戸氏)だという。従来は「原油安→エネルギーコストの下落→日本経済にプラス→日本株高」という考え方が一般的だった。しかし、2016年1~2月に原油価格が急落すると、日経平均株価はそれまでの2万円近辺から1万4865円(2月12日)まで下落した。これは、総合商社や石油企業などエネルギー関連企業の株価が下がったことのほか、サウジアラビアの政府系ファンド(SWF)が日本株を売却した影響が一部にあると考えられる。

原油価格の急落や国防費の増加により財政が逼迫、資金を確保する必要が生じ、資金を引き揚げたためだ。「実体経済の改善よりも産油国の換金売りによる負の影響のほうが大きく、日経平均株価の下落につながった。1バレル=40ドルを割ると再び同じことが起きる可能性がある」と藤戸氏は指摘する。

夏場のドライバーにとってはありがたい原油安だが、資源国の経済回復はおぼつかなくなり、世界的には株価の下押し材料となる。引き続き、原油価格の動向には注意が必要だ。

平松 さわみ 東洋経済 記者

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ひらまつ さわみ / Sawami Hiramatsu

週刊東洋経済編集部、市場経済部記者を経て、企業情報部記者

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