ディズニー「エレナ」を親子で見るべきワケ 「女性リーダー」の描き方が秀逸だ
結局、家族を優先したエレナの選択は正しかった、とわかります。国賓として招いた人物には弟がいて、弟を何より大事に思っていたからです。家族を大切にするエレナの価値観に共感し、両国の間で貿易を始めよう、と言ってもらえたのです。現実はこんなにうまくいかないなあ……と親世代は思いますが、こういうお話を見て育った子どもたちは「家族優先は正しい」と思うようになるかもしれません。
ところで、エレナは男の子も楽しく見られるようです。特に、テンポの速さ。主題歌を聴くだけでスピード感がわかると思います。ストーリー展開や場面の切り替えも素早く、まだるっこしい感じがありません。わが家の小学生の息子も面白がるエピソードがいくつもありました。
「美しさ」「やさしさ」といった、従来、女性の美徳とされてきた言葉とエレナとが結び付けられていないことも、男の子の関心に合うようです。主題歌には「勇敢なプリンセス」「国を守る」といった表現が続きます。つまり、エレナに期待される役割は男性のリーダーと変わらないのです。加えて、先に挙げたように、国民のために教育や道路におカネを使い、時に家族を仕事より優先する、新しい価値観も描かれます。
伝統的な女性らしさから自由なエレナ
私は、このようなエレナの描き方はアメリカの性役割に関する社会規範の変化を表していると見ています。エレナは依然として「ドレスを着た女性」ですが、その言動は、伝統的な女性らしさからずいぶんと自由です。
「エレナ」には、もうひとつ大事な要素がありました。それは人種に関するものです。それは、エレナがヒスパニック系であることです。
これまで、ディズニーはプリンセス映画の中でアフリカ系アメリカ人(『プリンセスと魔法のキス』)、ネーティブアメリカン(『ポカホンタス』)、中国人(『ムーラン』)などを描いてきました。最新の『モアナと伝説の海』は南洋の島嶼(しょ)部に住む人々を描いています。
「エレナ」の舞台「アバロー王国」は架空の国ですが、そのモデルがスペインであることは容易に想像がつきます。貿易を重視し、シエスタがあることなどがその理由です。メキシコの「死者の日」という先祖を迎えるお祭りに似た儀式が描かれるエピソードもあります。
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