「苦手なヤツ」と何とかうまくやっていく方法 ジャイアンはなぜ映画だと頼りになるのか

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「アサーション」とは、相手の反発を避けながら自分の正直な気持ちを率直に伝えるスキルのこと。まずこちらが心を開いて、「自分が困っているんだ」ということだけを正直に伝えてみる。そのとき初めて相手の心の中に、あなたの話を聴いてみようか……という気持ちが芽生え出す。

お互いが同じ目標へ向き直す、はじめの一歩を作るのが「アサーション」の役割だ。

話し手の言葉に耳を傾けて、話し手を理解したとき、聴き手は話し手を受け容れて、初めて共感できるのです。すると、聴き手に共感された話し手は、批判や非難なしに話を聴いてもらえる安心感と、話を聴いてくれる相手への信頼感をもとに話を続けることができます。これを「傾聴」と呼ぶ。

「お互い理解し合おう」という目標を共有することが難しいのは、このはじめの一歩が踏み出せないから。それさえできれば、人間関係においての目標の共有に道が開かれる。

マインドフルネスが、閉ざした心を開く勇気をもたらす

そうだといっても、アサーションは、相手の言動を修正しようとする行為にほかならない。「正直に言うと嫌われるかもしれない!」「もめ事が起きるに違いない!」という不安の気持ち、ザワザワとした摩擦を予感する。

そこでマインドフルネスだ。ありのままの自分の気持ちを客観的に見詰め直す。「私は、正直に言うと、相手とぶつかるかもしれないと不安になっている」という自分の心の声を聴くことで、冷静さと感情の整理がもたらされる。

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この自己客観視こそマインドフルネス。自分がとらわれていたネガティブ思考を手放し、自由自在に生きるチャンスを、マインドフルネスは与えてくれる。こうして頭の中を整理すると、自分が勝手に増幅していたおそれの感情が解放され、「正直に伝えても大丈夫だろう」「もしかすると何かのきっかけになるかもしれない」といった感情が芽生えてくる。そのとき、お互いの心を通わせる「正直な気持ちの表現」が初めて可能になる。

「お互い理解し合おう」という目標設定は、この一歩から始まる。共感の会話には、やがて共感の会話が返ってくる。あとは、その共感の会話の中で、相手を非難せずに耳を傾け合えば、信頼関係が少しずつ積み重なってくる。

人間関係のあり方を180度転換する「はじめの一歩」さえ踏み出せれば、あなたが思う嫌なヤツも、明日は味方になるかもしれない。

藤井 英雄 精神科医

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ふじい ひでお / Hideo Fujii

瞑想家、日本キネシオロジー総合学院顧問。瞑想歴40年。マインドフルネス瞑想歴25年。潜在意識の法則やマインドフルネス瞑想、認知行動療法、
さらには東洋医学、キネシオロジーなどを活用した画期的なメンタルヘルスプログラム「心のトリセツ流幸せの作り方」を開発。

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