小澤直平社長の趣味はゴルフで、ゴルフ好きが高じて「自前のゴルフ場を作りたい」との思いから、長野県のリゾート地にゴルフ場の建設計画を進めていた。数十億円もの資金を投じて、ゴルフ場自体はなんとかオープンにこぎ着けたものの、開業直後にそれまでの疲労がたたり、なんと病気で急逝してしまったのだ。
後を継いだ小澤二郎社長はすぐにゴルフ場の売却を決断。ゴルフ場の営業を続けながら数年かけて売却先を見つけたものの、グループ全体で多額の資金負担を余儀なくされた。幸い、当社の本業自体は堅調に推移していたため大事には至らなかった。「当社の歴史を振り返っても、この出来事が最も厳しい局面だった」(小澤社長)という。
このときの“苦い経験”があったからこそ、1980年代後半から1990年代前半にかけてのバブルに踊らされることもなかった。前述のような、かどやの強固な財務基盤は、過去の失敗があったからこそ、それを乗り越えて築かれたものといってよいだろう。
北米をはじめ、海外市場の開拓に意欲
加えて、近年の売上高の伸びに寄与しているのは「輸出」だ。特に米国、カナダといった北米市場に注力した結果、米国でのごま油のシェアは日本を上回る65%(日本製ごま油に占める割合)にも達するという。売上高285億0800万円のうち、海外は38億円と全体に占めるインパクトはまだ小さいが、北米のほか、東南アジアやヨーロッパにも開拓の余地は十分あると見ており、今後もさらなる成長が期待できそうだ。
ごまにとことんこだわり、国内のみならず世界中で愛されるごま油を軸に、伝統と品質を守り続ける「かどや」。創業からこれまでの歴史を踏まえた当社の特徴を一言でいえば、「ぶれない経営」という点に尽きる。
長年にわたり大手商社との密接な関係を維持し、「ゴマの総合メーカー」として時流に流されない経営姿勢を貫く姿からは、老舗企業ならではの風格が漂う。ゴマ一筋の“ニッチトップ企業”は、今後もわれわれの食卓の定番であり続けるだろう。
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