「かどや製油」ごま油一筋で159年栄える秘密 工場は小豆島に1つのみだが、驚異の利益率

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実際、かどやの強固な財務基盤は同社の強みの1つだ。まずは、何といっても自己資本の厚さが際立つ。2017年3月期の貸借対照表(B/S)を見ると、純資産合計は237億9400万円で、自己資本比率は実に80.7%に上る。

さらに純資産の内訳を見ると、過去の利益の蓄積を表す利益剰余金合計が179億4800万円を数える。これはベンチャー企業などによく見られる、割当増資等の資本政策によって“見掛け上”の純資産合計を膨らませたわけではなく、純粋に「安定的に稼ぐ力」があることを意味する。こうした強固な財務基盤を背景に、無借金経営を堅持しているのだ。

さらに、P/L(損益計算書)にも同社の強さがにじみ出ている。2017年3月期だと、売上高285億0800万円(前期比+5.0%)、経常利益33億7500万円(同+47.8%)、当期純利益は26億7300万円(同+86.0%)と、毎期2ケタ億円の利益を確保し続けている。また、売上高営業利益率は12.5%(前期5.7%)で同業の平均値(4.6%)を大きく上回る高い収益性を誇る。

50年前の転機、家庭用ごま油の展開をスタート

老舗企業として盤石経営を続けるかどやにとって、大きなターニングポイントになった出来事がある。今からちょうど50年前の昭和42年(1967年)、それまで業務用が中心だったごま油を、家庭向けにも展開をスタートさせたことだ。

きっかけは株式会社としての創業者、小澤直平社長の「ひらめき」だった。社長が米国に出張した際に現地のスーパーで、ピーナッツオイルやアボカドオイルなどが、200グラム程度の家庭用サイズの「小さな瓶」に入っているのを見てひらめいた。「ごま油で同じサイズのものがあればきっと売れるはず」――。そこで一斗缶入りだったごま油を一新し、黄色いラベルに、持ちやすいくびれのある独特のフォルムの瓶を考案。「純正ごま油」として売り出した。

だが当初、同業者からは「家庭でごま油なんて使うものか。売れるはずがない」との声が多かった。そこで、ごま油を使った料理の店頭実演を全国のスーパーで展開。

なかでも大きな転機となったのが、発売から3年後の昭和45年(1970年)ころ、当時のダイエーの店舗に製品を置かせてもらったことだった。天ぷらや野菜炒めなどの店頭実演を繰り返すうちに、主婦の間で一気に人気が広がっていった。グループ会社の販売網を生かして全国の酒屋や乾物屋への委託販売を早期に実施したほか、歌手の島倉千代子さん、タレントのミヤコ蝶々さんを起用したPR活動も功を奏した。

もっとも、これまでの歴史の中で失敗がなかったわけではない。経営上の最大の危機は、家庭向けへの展開が成功し、事業が順調に拡大していた昭和50年代前半に見舞われた、本業外での事業失敗だった。

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