「トランス脂肪酸」を食べると危ない根本理由

できれば摂取はゼロにしたほうがいい

来年6月からは、トランス脂肪酸の食品への添加が原則禁止される(撮影:吉野純治)

化学に詳しくない筆者には、なんとも不思議な話だが、同じ炭素の二重結合でも、水素原子が結合している場所によって、それが含まれる食材が健康な食材にも、命の危険をもたらす食材にもなりうる。

ここでいう命の危険をもたらす成分とは、トランス脂肪酸のこと。常温のとき液状の植物油が、水素を混ぜると軟質になる(トランスする)ことから付けられた名前だ。こうしてクリーム状になった油は半硬化油と呼ばれる。

代表的な食品としてマーガリンが挙げられるが、筆者の人生のほとんどの間、トランス脂肪酸はあらゆるタイプのスナック菓子や加工食品、パン類、それにレストランのメニューに含まれていた。

だが今、トランス脂肪酸は、心筋梗塞や脳卒中など循環器系疾患のリスクを高める成分として広く知られている。なにしろ、健康に敏感な人たちが摂取を控えてきた飽和脂肪酸よりも、はるかに危険だというのだ。

トランス脂肪酸を取りすぎると、動脈硬化の原因となる悪玉コレステロールが増える一方で、善玉コレステロールが減って、動脈内膜に炎症が起きやすくなるといわれる。

トランス脂肪酸からの摂取カロリーが2%増えただけで、冠動脈性心疾患のリスクは29%も上昇する。米国医師学会(AMA)によると、トランス脂肪酸を含む油を、オリーブ油(エクストラバージン)や菜種油に切り替えるだけで、年3万〜10万件の早死にを防止できるという。

自治体の規制は3年で効果を発揮

1990年代にトランス脂肪酸のリスクが明らかになって以来、米食品医薬品局(FDA)はその添加を全廃または最小限に抑える努力をしてきた。

2006年には食品表示にトランス脂肪酸の使用明記が義務づけられた。消費者の懸念も受け、食品大手は加工法を見直し、半硬化油を使わない努力をしてきた。来年6月からは、トランス脂肪酸の食品への添加が原則禁止される。

トランス脂肪酸の禁止を長く訴えてきた米公益科学センター(CSPI)のマイケル・ジェーコブソンは、「政府主導の研究で、100年前は安全だと思われていた食品が、いまや最も有害な脂肪であることが証明された」と語る。

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