日本人が「黙って忖度」ばかりする根本原因 ハイコンテクスト文化には落とし穴がある

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こうした「行間を読む」スタイルの日本のコミュニケーションは海外の人にとってはなじみにくい。たとえば、「難しい」という言葉。アメリカ人の知人は「これはdifficult(困難だ)の意味なのか、impossible(できない)の意味なのかわからない」という。同じ言葉がさまざまな意味を持っているだけではなく、日本語は特に同音異義語が多く、文脈の中で判断しなければならないケースも往々にしてある。

「同質性」を前提とした日本型のコミュニケーション

日本のコミュニケーションの特殊性はまだまだある。フランスのビジネススクールINSEADのエリン・メイヤー教授の著書『The Culture Map』(日本語版は『異文化理解力』)によれば、日本は「評価のスタイル」「説得の方法」「決断志向」「見解の相違の解決法」などにおいて、特異な傾向を示している。

「評価のスタイル」では、部下などへのネガティブなフィードバックについて、ロシアやイスラエル、オランダなどのように、直接的、単刀直入に伝える国に対し、日本は最も、柔らかく、やんわりと伝える国、とされている。「説得の方法」においては、上司と部下の理想の距離が近く、組織がフラットである「平等主義的」なデンマーク、オランダ、スウェーデンといった国々に対し、日本はその対極の「階層主義」の最たる国とされている。上司と部下の理想の距離は遠く、肩書が重要、組織は多層的で固定的、序列に沿ってコミュニケーションが行われる。

また、「決断志向」についてはナイジェリアや中国、インドなどが、「トップダウン志向」で決断は個人(主に上司)がするのに対し、日本は最も「合意志向」が強く、決断は全員の合意のうえ、グループでなされる、と位置づけられている。さらに、「見解の相違」をめぐっては、イスラエルやフランス、ドイツなどの見解の相違や議論はチームや組織にとってポジティブなものと考える「対立型」の国と比べ、「見解の相違や議論はネガティブで、表だって対立するのは問題」と考える「対立回避型」の最たる国が日本である、と結論づけられている。

こうしたスタイルはアジアの国々と共通するところも多いが、極端にどちらかに振れているというのは日本の特徴的なところだ。つまり、極度に「非言語志向」で、「ネガティブフィードバックを避け」、「階層主義的」で、「合意志向」で、「対立回避型」のコミュニケ―ションスタイルであるということらしい。こうしたスタイルは「一億総中流」の島国の秩序を保つために生み出され、機能してきた、「同質性」を前提とした日本型のコミュニケーションといえるのだろうが、グローバル化、都市への一極集中、過疎化、高齢化、格差の拡大とともに国民の価値観が多様化する中で、効能を失いつつあるように思える。

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