国際的によく知られているのは、日本人は「きわめてハイコンテクスト」のコミュニケーションスタイルである、ということだ。コンテクストとは文脈という意味だが、話し手と聞き手との間の文化的背景・文脈の共通性が高いのがハイコンテクストの文化、低いのがローコンテクストの文化ということになる。
この概念は1976年にアメリカの人類学者エドワード・ホールによって提唱された。島国であり、人種・文化的な多様性があまりない日本の場合、話し手と聞き手との間に共通項が多く、言葉を尽くさずとも何となくわかりあえる、暗黙知がある、という考え方だ。
一方、ローコンテクストの文化では、共通項が少ないので、きっちりと言語化し、クリアでシンプルでわかりやすいメッセージを伝え、あいまいさを排除しなければならない。ハイコンテクスト文化とローコンテクスト文化は表1のようにまったく対極のスタイルだが、その中でも人種のるつぼであるアメリカが最も、ローコンテクストな国であり、日本は反対に最もハイコンテクストな国と位置づけられている。
コミュニケーションスタイルの違い
ハイコンテクスト文化 | ローコンテクスト文化 |
---|---|
日本、中国、エジプト、サウジアラビア、フランス、イタリア、スペイン | アメリカ、イギリス、カナダ、ドイツ、デンマーク、ノルウェー |
暗黙知 | 形式知(言語化して説明可能な知識) |
言葉以外にも状況や文脈によっても情報を伝達 | 伝達される情報は言葉の中ですべて提示される |
あいまいな言語 | 正確性が必要とされる言語 |
一般的な共通認識に基づく | 言葉に基づく |
感情的に意思決定される | 論理的に意思決定される |
沈黙は不快ではない | 沈黙はコミュニケーションの中断として不快 |
協力的なビジネススタイル | 競争的なビジネススタイル |
関係性重視 | タスク重視 |
チーム志向 | 個人志向 |
少数で緊密で長期志向の関係 | 多数で縛りが弱く短期志向の関係 |
関係性重視の意思決定 | 論理性、規則重視の意思決定 |
変化より伝統 | 伝統より変化 |
身体や経験で技術継承する | 明示できる知識として継承する |
控えめなリアクション | わかりやすいリアクション |
グループの内と外との境が明確 | オープンで柔軟なグループ形成 |
異なる文化、人種、背景を持つ人同士がわかりあうたった1つの手段はコミュニケーションである。だから、アメリカでは徹底して、言語化し、メッセージ化し、口頭で伝える教育が行われる。アメリカと日本とのコミュニケーションスタイルの違いは宣教師と禅僧のようなものだ。アメリカの宣教師は声に抑揚をつけ、大げさなジェスチャーで感情をこめて演じる、まさにパフォーマー。聖書という言語化されたクリアなメッセージを伝えていく一方で、禅僧は感情を極力抑え、内省的な問答によって、悟りを開く。
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