世界一のレストラン「ノーマ」が抱える矛盾 1食8万円のメキシコ料理はおかしくないか

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ノーマ・メキシコの客のほとんどは、料理の600ドルだけでなく、ユカタン半島までの航空運賃と、トゥルムまでの車代、そして少なくとも一晩はホテルに泊まる料金がかかる。それでも、それを喜んで負担する人がいるのは驚きではない(現在のレゼピなら、デスバレーでソーセージのバーベキューをやっても、予約でいっぱいになるだろう)。

ただ、レストラン批評家としてどうしても引っかかるのは、ノーマ・メキシコでは、地元の伝統と食材にこだわった料理を、よそ者が作り、よそ者が消費することだ。

ノーマが世界に名をとどろかせた理由の1つは、デンマークあるいは北欧の食材に徹底的にこだわり、それまでこの地にはなかった独創的な料理を提供したことだ。ノーマは「地産地消」というコンセプトを新しいレベルに高め、世界中のレストランにまねされてきた。それなのにノーマ・メキシコでは、地元の食材と伝統が、ばか高い値段で、観光客に食されている。

そもそも批評の対象ではない

レゼピとノーマのスタッフを責めるつもりはない。彼らは、自分たちがメキシコに恩義を感じていて、お返しをしたかったと述べている。彼らはトゥルムで、自らの好奇心を追求して、高いレベルの新しい料理を生み出したのであり、それこそがクリエーティブな人間のやることだ。

だがそれは、ノーマ・メキシコの芸術的な側面にすぎない。ビジネス面では、彼らはそのクリエーティブな活動を、計画的な希少性と相対的コストによって、ラグジュアリー品に注ぎ込んだ。ラグジュアリー品は日常から切り離されて、莫大な富と排他性という文化的コンテクストに置かれがちだ。

そのラグジュアリー品を絶賛することも、酷評することもできる。だが、私にとっては、そもそも批評の対象ではない。私はもっと地元とつながりの深いレストランの批評を書きたい。

(執筆:Pete Wells記者、翻訳:藤原朝子)

© 2017 New York Times News Service

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