野党は「共謀罪」審議を「政治ショー」にするな 金田法相でなく、官僚から問題点を引き出せ
一方、与党の自民党や公明党議員は、法案の趣旨、目的、新たな概念として登場した「テロ等準備罪」やその構成要件である「実行準備行為」などの定義についてひとつずつ質問し、刑事局長が要領よく答弁していく。逐条的に法案のすべてを説明しているわけではないが、その答弁を読めば、法案の全体像が理解できるようなやり取りとなっている。むろん、これは予定調和の世界の話であり、与党議員が法案の問題点を指摘したり追及することはない。
野党でも弁護士出身など一部の議員が、官僚相手に専門的な知識に基づき鋭い質問をぶつけている。しかし、全体として不毛といえるようなやり取りが延々と続き、法案の姿が浮かび上がらないまま、審議が終了して採決に移っている感は否めないのである。
「政府委員制度の廃止」は逆効果に
国会審議がなぜ、こんな状態に陥っているのか。その最大の理由が1999年に導入された「政府委員制度の廃止」だ。日本の国会には明治以来、「政府委員制度」が存在していた。衆参両院の委員会審議で、閣僚のみならず中央省庁の局長らが「政府委員」として閣僚に代わって答弁する仕組みだ。閣僚が答えられないような専門的、複雑な質問に官僚が対応することができるわけで、中には「重要な問題なので政府委員に答弁させる」と言い切って失笑を買った大臣もいる。その結果、政府委員制度は「官僚主導」の政治につながっていると批判され、1990年代の政治改革の中で「政治主導」を実現するため廃止する動きが出てきたのだった。
廃止を特に主張していたのが自由党党首だった小沢一郎氏で、自自公連立政権時代に、自民党もこれを受け入れて国会改革法が成立し、「政府に対する委員の質疑は、国務大臣又は内閣官房副長官、副大臣若しくは大臣政務官に対して行う」ことが原則となった。しかし、完全に官僚抜きで国会審議をするのはあまりにも無謀だということで、「行政に関する細目的または技術的事項について」必要があると認めるときは各省の局長らを「政府参考人」として呼び、説明を聞くとなった。
各省の大臣、副大臣のみならず野党も含め政治家が、法案や政策をしっかり勉強し、国会で野党の質問に対応するのであれば、国会審議が深まり、政治が活性化するはずだった。しかし、残念ながら現実はどうやら逆だったようだ。
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