だから、「半沢直樹」は、最後は自分が面白いと思うものを作るしかないと思ったわけ。それしかないと。だから、今は2カ月、家に帰らずに撮影と編集をしています(笑)。
最初から“常識外れ”のドラマだったから、原作を書いた池井戸潤先生との最初の打ち合わせのときも「一生懸命作りますけど、たぶん当たらないですよ」と言っていたくらいです(笑)。ただ、僕はこのドラマを通して、半沢直樹という人間の生き方や面白さを描きたかった。半沢の人生はテレビにいちばん合っている「成り上がり」の物語。自分たちで本当に面白いと思った原作だったので、まだ書かれていない「半沢が頭取になるまで僕にやらせてください」と池井戸先生にお願いもしました(笑)。
高視聴率の2つの要因
――なぜ、視聴率が取れたと思っていますか。
それは2つあります。ひとつは、原作の面白さです。もうひとつは半沢直樹を演じる堺雅人さんの演技です。これらがいい形で化学反応を起こしたのだと思います。
僕は池井戸先生の本を、直木賞を受賞した『下町ロケット』や吉川英治文学新人賞を受賞した『鉄の骨』などを含め、デビュー作からすべて読みました。ただ実は最後までこのドラマの原作である『オレたちバブル入行組』や『オレたち花のバブル組』は読めなかった。バブル入社の話で「昔はよかったぜ」という話ではないか、と勝手に思い込んでいて、あまりいいイメージがなかった。でも、実際に読んでみると、このシリーズがいちばん面白い(笑)。
とにかく余計な話を入れずに、ストレートに話がどんどん進んでいく。この作品に、昔の日本映画が持っていた「パワー」を感じたのです。だから、僕は今回のドラマ化にあたって、黒澤明監督の映画『用心棒』(1961年公開)のような作品にしたかったのです。僕の中では、「半沢直樹」は「現代版用心棒」です。
『用心棒』はテーマがなくて、とにかく「活劇」。用心棒が村にやってきて、一見して悪者がわかる村人に対し、はちゃめちゃやって、物事に片をつけて去って行く。この作品が面白くて、何回も見ながら、こういうドラマにしたいと。だから、ドラマを豪華に見せようとか、恋愛を入れようとか家族愛を描こうといった、サイドストーリーを入れることはせず、原作のように次々とテンポよく話が進むようにしました。
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