《対決!世界の大空港5》英・ヒースロー 発着枠までも自由売買!オープンスカイで独り勝ち。反撃するフランクフルト

ヒースロー独走を止めろ 欧州シェア狙うライバル

こうした状況を横目に、ほかのライバル空港は虎視眈々(たんたん)と欧州トップシェアの座を狙っている。

その筆頭にあるのがドイツのフランクフルト空港だ。07年現在、欧州と北米を結ぶ大西洋線のうち40%以上の路線が英国発着便だが、次いで需要が多いのはドイツ発着便なのだ。

実はフランクフルト空港もヒースロー空港同様、キャパシティはほぼ限界に達している。ドイツではまだ、スロットトレーディングは一般化されていない。その代わり乗り継ぎ時間の短縮だけでなく、大型機と小型機の滑走路を臨機応変に振り分けるなどの工夫を凝らして、空港の効率性を向上してきた。

フランクフルト空港を運営するフラポートも、念願の空港拡張に向けて総額70億ユーロをつぎ込む計画を打ち出している。既存ターミナルのゲート数を増やすだけでなく、11年までに新たに3本目の滑走路を稼働させるほか、14年にも「ターミナル3」を開設する計画だ。空港内には拡張計画の内容を自由に見学できるギャラリーを開設するなど旅客へもアピール。20年には07年比1・6倍の年間旅客数を見込んでおり、能力拡張に苦しむヒースロー空港の旅客数を優に上回ることになる。

フランクフルト空港に降り立ってまず驚くのは乗継客の多さだ。日本や米国、欧州各国やドイツ国内から大型機が次々と到着するが、手荷物受取所は人もまばら。多くの到着客は、飛行機を降りると一斉に次のフライトが出発するゲートへ向かっていく。

実際に空港利用者の53%は乗継客。国内のミュンヘンだけでなく、パリやローマ、オスロなど欧州の他都市へもわずか数時間で移動できるため、経由地としての需要が高いのだ。

だがフランクフルト空港には、単なるトランジット空港に甘んじる考えはない。空港の横に位置するかつての米軍基地、35ヘクタールの土地を再開発。ホテルやオフィスビル、コンベンションセンター(国際会議場)、商業施設などを建設し、「ゲートウェイ・シティ」とする構想が進行中で、フランクフルトそのものを「目的地」として訪れる旅客の取り込みに動いている。

"空港力"アップに大手航空会社も参戦

 フランクフルト空港の改善に力を注ぐのはフラポートだけではない。ここをハブとするルフトハンザ航空はフラポートに対して10%出資している。同社のハブマネジメント事業、シニア・バイス・プレジデントのカール・ルドルフ・ルプレヒト氏は「空港との連携をより深めることで、サービスの質や定時性向上、コネクションミス低減を推し進めやすくなる」と話す。

”空港力”の強化は、そこを拠点とする航空会社にとっても利用者の数を左右する死活問題だ。ローコスト航空(LCC)との競争激化などを背景に、ルフトハンザ航空は早い段階から、フランクフルト空港強化によるメリットに着目。05年10月にフラポートの株式を1・7億ユーロで4.95%取得、その後出資比率を引き上げてきた。今後の追加出資も「ありえない話ではない」(ルプレヒト氏)と意欲的だ。
 
株主になれば、空港の開発における発言力が増す利点もある。たとえば、同航空は今秋から超大型ジェット機「エアバス380」の就航を始める予定だが、2階建になっている飛行機にあわせてすでにゲートを改装済み。こうした迅速な対応ができるようになるほか、今後新ターミナルを建設するうえでも、乗り継ぎなどの点でルフトハンザの顧客にとって使い勝手の
いいゲート設計を提案できるといったことも考えられる。

さらに同航空は将来的には、キャパシティがほぼ限界に達しているフランクフルト空港だけに頼らず、そこから1時間程度で行けるミュンヘン空港を定期便で結ぶことで"ダブルハブ"体制を作り上げる構想も描いている。
 
 欧州には、フランスのシャルル・ド・ゴール空港、オランダのスキポール空港など、ほかにも有力な拠点空港がひしめく。自由化の空の下、欧州の航空シェアをめぐるハブ空港間の競争は一段と過熱していきそうだ。


(週刊東洋経済)

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