デフレ脱却なら、金利抑制が効かなくなる?

「金融緩和で、必ず金利が下がる」は大間違い

日銀が大量に長期債を購入すれば、必ず需給が逼迫して長期債の価格は上昇・長期金利は低下するというわけではなく、金融緩和政策によってデフレ脱却が実現するという見通しが強まれば、将来の金利上昇に対する確率がより高いと考えられるようになり、長期金利は上昇していくはずなのだ。

予想外に早く短期金利が上昇すれば大きな混乱に

金融市場では、政府債務の累増によって債務不履行の可能性が高まり、長期金利の上昇が起こることが懸念されている。財政破綻を懸念した金利上昇が起これば、債務危機に陥った南欧の国々のように、国債の調達金利が上昇して利払い負担が増加し、それがさらに財政破綻の懸念を強めるという悪循環に陥る。

財政再建が喫緊の課題であることは言うまでもない。しかし、ここで強調しておきたいのは、財政破綻を懸念した悪い金利上昇が起こらなくても、日本経済がデフレから脱却すれば短期金利は上昇するはずで、それを織り込めば長期金利は上昇する可能性が高いということだ。

金融市場の参加者の多くが短期金利は今後も低水準にとどまると予想している中で、予想外に早く短期金利が上昇したりすれば、市場は大きな混乱に陥るおそれがある。1980年代の米国では、短期の預金を集めて長期固定金利の住宅ローンの貸し付けを行っていた貯蓄投資組合(S&L)が、短期金利の急上昇によって、すでに貸し出している住宅ローン金利よりも預金金利のほうが高くなってしまい、逆ザヤを抱えて経営が行き詰った。

日本では低金利が続いてきたので、金利負担の小さい変動金利型の住宅ローンを利用している消費者は少なくない。この場合は、短期金利が急上昇すれば、多少の時間差はあっても、消費者のローンの返済負担が急激に重くなる。中には返済不能に陥る人たちも出てくるはずだ。

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