電車の混雑率測定方法には大きな問題がある 定員増やすために座席数を減らしている現実
電車の旅客定員は必ずしも統一的な基準に基づいて決められていないという問題もある。
車両に定員数が表示されているのを見たことがある人もいるだろう。これは表記定員といい、計算方法も定められている。1987年運輸省令『普通鉄道構造規則』により、鉄道事業者が立席数を指定していない場合、立席客が乗車できる部分の床面積に対して1人当たりの専有面積が0.3平方メートルとなるよう立席数が規定された。2002年からは細かな設計を許認可の対象とせず要求されるスペックのみを規定する性能規定化が行われたが、適用される基準はほぼ従来どおりである。
一方で、国が発表する都市鉄道の混雑率は、私鉄の定員をかつての国鉄の定員の算定方法に合わせて換算する方法(標準定員)で算定されている。
国鉄の末期に主力車両であった103系電車の場合、先頭車の定員は座席48人と立席88人の計136人であるが、昭和20(1945)年代には、63系改造クモハ73形は座席56人、吊り手・スタンションポール82人、その他立席21人の計159人、昭和30(1955)年前後に製造されたクハ79形920番台は座席56人、吊り手70人、その他32人の計158人といった具合に、同じ通勤列車でも定員数はまちまちであった。
その後、国鉄は、立席数を吊り手や手すりなどの設備の数に限定したため、1両当たり20人程度定員が減少した。このように国鉄が定員数の計算方法を改めたものの、私鉄はそのまま続けたために両者で定員数に差が出てしまったのである。
同タイプの車両でも会社によって定員が違う
昭和40(1965)年代の国鉄のクモハ73形が一例として挙げられる。この73形のベースとなった旧63系は終戦直後に東武鉄道や小田急電鉄など私鉄各社に配分された。73形の定員は座席56人と立席80人の計136人。一方、63系は東武では7300系と呼ばれるが、定員は座席62人立席97人の計159人、また、小田急では1800形と呼ばれ、座席62人立席96人の計158人であった。このように同タイプの車両でも会社によって定員数がまちまちなのである。
国は、そこで、私鉄と国鉄の定員数を一致させるために、標準定員を導入。ロングシート車は客室面積を0.35平方メートルで除した数値とし、セミクロスシー車はクロスシートの割合が80%を超える場合は座席数を定員数とする。80%を下回る場合は0.40平方メートルで除した数値、クロスシート車は座席数を標準定員とした。一般的にはこの標準定員によって計算された混雑率が示されている。
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